第13話 始まりと始まり


エアー「・・・始まりは数千年前・・・」


以下、エアーの語り口調。




その、ほんの数千年前・・・俺達は地上に存在する悪を倒すために天空から降りた。


とにかく、今は地上に悪がはびこっていると・・・それだけ言われた。



よくは分からないが・・・

とにかく、すぐに見つかるだろう、と思っていた。




ダークネス「・・・悪がいる、以上?
      範囲が広すぎるだろうが!!」


エアー「しょうがないだろう・・・
    とにかく、探すしかない。」



俺とダークネスは地上に降りて1年程度探したが、全く見つからなかった。


他の天使も同様だった。




主要となる天使は12人。


まず、それぞれの属性を司る天使。


水を司るサウザンド、

雷を司るギガ、

風を司るエアー、つまりこの俺・・・

光を司るミスト・エレメンタル、

氷を司るフィラネス、

生と死を司るスピード・エレメンタル、

地を司るグランディア、

幻を司るミラージュ、

空を司るオーバースカイ、

闇を司るダークネス、

時を司るカルテット。


炎と自然属性は空席だ。


後、属性を司る天使以外で発言力を持っていたのかエメリアだ。



俺とダークネス、カルテット、そしてエメリアは仲が良かったからな。

いつも一緒に行動していた。


一方、今敵となっている奴等の方。


スピードは自身の姉であるミストと共に行動していた。


ギガとグランディアは単身だった。




さて。


その、俺達が悪を探していた1年の最後の方にとんでもない事件が起きた。


それは・・・




スピード「そ、そんな・・・ねえ・・・さん・・・」




ミストが人間の盗賊団に襲われて殺されてしまった。




エアー「ミストが・・・殺された!?」

ダークネス「そうらしいな・・・」


カルテット「人間の盗賊団に・・・ですか?
      おかしいじゃないですか。
      やろうとすれば簡単に勝てますよ?」


ダークネス「だが・・・ミストは戦闘に最も反対している・・・
      傷つける行為をしようとしないんじゃないか・・・?」


エアー「だが、それでも天使の生命力は桁違いだ。
    ナイフやらなんやらで何回か切りつけられただけじゃ全く行動に支障は出ない・・・
    それに・・・ミストはその潜在能力は全員の中で最高とされる・・・
    いくらなんでも殺されるわけが無いんだが・・・」





その日からスピードが誰とも口を利かなくなって。


スピードにとってミストは唯一の心のよりどころだったからな・・・







エアーがここまで語ったところでライトが1つの事に気付いた。



ライト「おい、そういう事は・・・
    それにキレたスピードって奴が私怨で大量虐殺やってるってか!?」


エアー「簡単に言うとそうなる。
    きっかけはただそれだけだった。
    それにグランディアとギガが協力している。それが基本だった。」



そしてエアーは更に深く語りだした・・・





更に不可解な事が起きた。


その時、ミストと一緒に地上に降りた奴がいた。


それが、ミラージュだった。



そのミラージュも傷だらけで発見されていた。



ダークネス「・・・おいおい・・・」


エアー「いよいよおかしいな・・・
    ミストに関しては「攻撃しなかった」で納得するにしても、
    ミラージュはむしろ向かってくる相手には好戦的なんだが・・・?」


カルテット「まさか心臓を一刺しにされたんじゃ・・・」

エアー「それだったら即死だろうが・・・
    それに、あいつがそんなの食らうわけが無い・・・」



ミラージュは、戦闘に意欲的ではないが、向かってくる相手には容赦をしないタイプだった。


だから、盗賊団ごときすぐに潰せてもいいはずだったのに、逆にやられてきた。





エアー「全く、どうなっているのか・・・」





グランディア「ふん。」


ダークネス「ん・・・?
      お前、何しに来た。」



グランディア「溜息をついてたようだが、
       何故だ?」


ダークネス「そりゃ、2人もやられてりゃそうなるって・・・」



グランディア「ふん・・・ミストとミラージュが甘かったからだろう?
       だから人間ごときにやられたのだ」


エアー「・・・さもやられて当然、というような物言いだな・・・」



グランディア「そう言ってるのだよ。」




ダークネス「てめぇ・・・!!
      仲間がやられたっつーのにその物言いは何なんだ!!
      ぶっ潰すぞ!?」


エアー「抑えろ。
    こんなバカに構う事は無い。」




グランディアは、人間を下等生物として扱い、

また、俺達の事も見下していた。


リーダーであるフィラネスの発言にも逆らい、

全く協調性が無かった。



まあギガはそれ以下だが。

ギガに関してはもう本当にバカだから何言ってもしょうがない。

あいつは簡単な計算も出来ない。



エアー「3×6は・・・?」


ギガ「36!!」




とにかく、その事件から全ては始まってしまった。


ある日の事だった。



スピード「・・・」


エアー「スピード・・・?
    ・・・久しぶりに出てきたな・・・」


あの事件以来しばらくスピードは姿を見せなかった。

だけど、突然出てきて、そして、言い放った。



スピード「人間を・・・殺す」



エアー「・・・?」


その時はあまり深く考えていなかった。

ただの気の迷いかと思っていた。だが。




ダークネス「エアー!!」

エアー「どうした、そんなに慌てて・・・
    面倒事がまた舞い込んできたか・・・」


ダークネス「ス、スピードが・・・」


エアー「スピードが・・・?」

ダークネス「スピードが地上で大量虐殺をやっているって・・・」


エアー「何だと!?」






スピード「・・・」


エアー「スピード・・・何のつもりだ!?
    罪も無い奴等をむやみやたらに虐殺するなんて事を・・・!!」


スピード「罪が・・・無い・・・?
     笑わせてくれる・・・!!
     人間なんて罪しか無い生物だ!!
     生きている事、そして生まれてきた事が罪だ!!
     人間だけじゃない!!どんな生物だってそうだ!!
     この俺達・・・天使だけが生きている資格のある者なんだ・・・」



ダークネス「な、何言ってんだ・・・?」


スピード「人間もその他の生物も、生かしておいてはいけない!!
     地上に生きる全生物を・・・抹消する!!」



エアー「くっ、何を突然!!
    姉が殺されただけで地上の生物全てに八つ当たりか!!」



スピード「だけで、だと・・・?」


エアー「ミストを殺したのはあの盗賊団だろう!?
    何故他の奴等まで殺す必要がある!?」



スピード「・・・人間も何もかも所詮その程度の存在だからだ!!」




エアー「・・・!!
    狂ってやがる・・・話に筋道も通っちゃいない・・・
    だったら、お前を倒すしかない・・・!!」


ダークネス「同感だ・・・こいつを放ってはおけない・・・!!」







グランディア「何のつもりだ?」


エアー「!?
    グランディア!!」



グランディア「仲間殺しか?」

エアー「・・・時には決断も必要だ・・・!!」



グランディア「だが・・・スピードをここで殺させるわけには行かないのでな。
       思想が一致している。地上の生物を殺す・・・と!!」



ダークネス「お、お前も!?」




カルテット「どうしたんです!?」


エアー「カルテット・・・!!
    ・・・スピードとグランディアを、潰す!!」


カルテット「・・・ただ事じゃなさそうですね・・・!!
      加勢させてもらってもよろしいでしょうか!?」

ダークネス「当たり前だろ・・・!?」





グランディア「歯向かうなら・・・貴様らが死ね!!」





こうして、俺達は仲間割れを起こしてしまった。



結局、俺達が勝利した。


仲間殺しはさすがにフィラネスが来て止められた。


とはいえ、フィラネスもこれを重罪とし、スピードとグランディアを封印する、と言った。





そして・・・


エアー「・・・封印、完了。
    多分永遠に封印は解けないだろうな・・・」


ダークネス「当然の報いだろ・・・?」




エメリア「2人とも、大丈夫だった?」


エアー「ああ・・・別になんとも無い。
    こうしなきゃ地上が滅びる可能性もあった・・・」


ダークネス「ったく、あいつら何を考えてやがったんだ・・・」


ともかく、封印して数千年の間、何も起こらなかった。



だが、それを忘れかかっていた頃・・・事件は起きた。

それは、あまり昔の事ではない。

たかが数年前の事だった。



その頃俺達はやっぱり一緒にいた。

久しぶりに地上でゆったりしてた。



エアー「結構ゴタゴタしてたが、
    最近は事件らしい事件も無い・・・
    ゆっくりする間があって助かる・・・」


カルテット「次にこんなゆっくりできるのは何万年後でしょうね?」


ダークネス「知らないが、まあゆっくり楽しむしかないだろ!?
      しっかしお茶漬け食いたい。」

エアー「・・・」


カルテット「私は鳥の照り焼き食べたいですね。」

エアー「・・・お前らは鶏肉にお茶かけて焼いて食ってろ・・・」


エメリア「暖かいね〜。」



エアー「まあ、とにかく・・・ゆっくり・・・」





ダークネス「ん?
      あっちが騒がしいぞ・・・?」



近くにあった町から叫び声とか悲鳴とかが聞こえてきた。



エアー「・・・ゆっくりしている暇があまり無いのは悲しい事だな。」


カルテット「とにかく、行って見ましょうか。」




その町では・・・



エアー「・・・酷いな・・・」



町がほぼ全部壊れていた。


住民は全滅しているようだった。

生き残りは期待できそうな状況ではなかった・・・。




ダークネス「そういえば何処かの街でも壊滅的被害があったらしいな。
      滅命団なる連中に襲われたとか・・・」


エアー「その事件はこの地方とは遠く離れているな・・・
    おそらく別の何かだろう・・・」



ちょっと歩くと、人影が見えた。


カルテット「誰かいるようですね。」

エメリア「どうするの?」




エアー「犯人か、生き残りか・・・行ってみるしかないな。」





そしてその人物を見た時俺は信じられなかった。



そう、もう分かっただろう?


それは・・・







スピード「久しぶりだな、エアー・・・」



エアー「・・・なぜ、お前が?」


スピード「封印はもう解かれた、
     今こそ地上の全ての生命を消し去る時だ・・・!!」



ダークネス「あの封印を解いたのか!?
      封印されている間に力を溜め込んでやがったか・・・!!」



エアー「予想外だな・・・」



スピード「一度だけ、聞こう。
     お前達は、協力する気は無いか?」



エアー「・・・無いに決まっているだろう?
    大量虐殺を行う理由なんて、存在しない!!」



カルテット「むしろあなたを今ここで消し去りましょうか。」


スピード「・・・」





グランディア「出来ると思ったか?」



エアー「グランディア!!やっぱりお前もいたか・・・!!」




グランディア「残念だが、死ね!!
       「アースシェイク」!!」






その時、大地が激しく揺れだした・・・


エアー「くっ!?
    飛べ!!地面から離れろ!!」


ダークネス「あ、ああ・・・!!」



そして。


その内、大地が割れて、その町は大地の裂け目に飲み込まれてしまった。



カルテット「こ、これは・・・!!
      以前とはエネルギーの強さが・・・!!」


エアー「・・・本当に力を溜め込んでいたのか・・・!!
    あの時、封印する、というのはやはり生ぬるかったのか・・・」


ダークネス「こうなったら、今回は本気で殺しに行くか!!」





グランディア「ふん・・・」




あの時は俺達が勝った。


今回も勝てる自信があった。


俺達だってあの時のままじゃない。


だが。




スピード「その程度か・・・?」




エアー「ば、馬鹿な・・・!!
    俺達の攻撃が、通用しない!?」



グランディア「貴様らは所詮その程度の存在だ、
       そのまま消え去るがいい・・・!!」



死を覚悟した。


もう駄目だ、ってな。




だが、ここで新たなる役者が登場するわけだ。






????「「大天使の名において命じる・・・
      空間よ、奴を束縛せよ」!!」




エアー「!?
    だ、誰だ・・・!?」



グランディア「ぐおっ!?」


その時、スピードとグランディアの動きが止まった・・・




????「こっちに来い!!」



それも天使だった。


だが、見た事がなかった。



ダークネス「な、何だぁ!?」


エアー「考えている暇は無い、行くぞ!!」






俺達はその謎の天使についていった・・・




????「ここまで来れば大丈夫だろうな。」


エアー「あ、ああ・・・助かった。礼を言う・・・
    ところで、お前は一体・・・?」



????「俺か?
     えっとだな・・・俺はミカエル。
     この空間を統制する大天使だけど。」



エアー「空間を・・・」


カルテット「統制!?」


エメリア「ど、どういう事・・・!?」




ミカエル、と名乗ったその天使は想像を超えた事を話し始めた・・・




ミカエル「ああ・・・天空の天使は知らないんだよな・・・
     俺のような、『空間の天使』の存在を・・・」


カルテット「空間の天使・・・!?
      どういう事なのですか!?」



ミカエル「お前達はこの世界に存在する1つの種族のような存在だ。」


エアー「・・・?
    まあ、間違ってはいないが・・・」


ミカエル「で・・・俺達は、お前らのような奴等からすると・・・そうだな・・・
     神って奴じゃねぇかな。」



ダークネス「か、神って・・・
      ばっかじゃねぇの!?
      神なんているかっつーの!!」


エアー「俺らも普通の人間から見たらそう言われる存在なんだが・・・」



ミカエル「ポジショニングがそんな感じってことさ。
     世界のつくりぐらい知っているだろ?」


エアー「それぐらい知っている。」





この世界は、空間というものの中にある。


1つの空間の中にいくつかの世界が存在している。


更に、空間は時空の中にある。


時空の中に複数の空間がある。


そしてその時空が3つか4つか存在する。


これが世界のつくりだ。




ミカエル「その通り。
     そして・・・この空間を作ったのが俺達『空間の天使』ってわけだ!!」



エアー「何だって!?」


ダークネス「マジで!?」




ミカエル「最近この世界で不穏な空気が漂ってるらしいからわざわざ来たんだが・・・
     本当に結構危ないようだな。」



エアー「あ、ああ・・・」


ミカエル「敵について教えてくれないか?」







話が長くなりすぎたな・・・ここからは簡略化して話そう。


俺達はミカエル達『空間の天使』の協力を得る事が出来た。


俺達に直接仕えていたある程度の数の天使と、その空間の天使とで、


天空に突っ込んでいったんだ。


もうその頃には天空はスピードとグランディアの思うが侭。

フィラネスもどうしようもなかった。



そして、決戦の日。



ミカエルと同じ大天使であるラファエル、ガブリエルの2人と俺達、そしてそのミカエル・・・

あわせて7人で先に行った・・・



途中にいた奴はことどとく倒していった。手早く、出来る限り手早く。



そしてスピードとグランディアに遭遇した。




だが、また奴等に苦戦した・・・



グランディア「その程度か、貴様らの力は?
       取るに足らない物だな・・・」


スピード「甘すぎるな、その力・・・」


ミカエル「嘘・・・だろ・・・?
     なんで俺達が・・・たった2人に・・・敵わない!?」


ラファエル「くっ・・・」




グランディア「さあ、そろそろ死んでもらおうか!!
       「グランド・バニッシュ」!!」






ガブリエル「こ、これは・・・!?
      みんな、危ないよ!!」


ラファエル「ここまでか・・・!!
      くそっ、一旦引く!!」





エアー「くそっ、やっぱり駄目なのか・・・!?」




もう、全員撤退しようとしていた。


だけど、そのミカエルが。




ラファエル「ミカエル!!お前も早く逃げるんだ!!」



ミカエル「・・・俺は逃げない!」


ラファエル「何だと!?」


逃げる事を、拒否した。



ミカエル「俺は仲間を守るためにこれまで力をつけてきた・・・
     ここで逃げてもすぐに追われてやられてしまう!!
     それなら、俺が・・・!!」



ラファエル「犠牲になる気か・・・!?
      正気なのか!?」


ミカエル「当然だろ?
     さあ、早く行け!!」


ラファエル「・・・本当に、本当か!?」




ミカエル「何度言えば分かる!!早く行け!!」



ラファエル「・・・そこまで覚悟があるなら・・・
      それを尊重しよう・・・!!」





グランディア「ふん、英雄気取りか?」



ミカエル「さあな・・・
     だが俺は・・・死んでもお前らを殺しに行く・・・」


スピード「やれるものならやればいい。
     死から戻る事が出来るならな!!」







それ以降しばらくスピード達は息を潜めていた・・・



多分ミカエルが何かやったんだと思う。


だけど、ミカエルはそれから行方知れずになった。




本気で、奴等を倒すためにはあいつの力が必要不可欠だが・・・






エアー「・・・途中で省略した事もたくさんあるが、長くなりすぎてしまった・・・」



ライト「な、なんてスケールのでかい話なんだ・・・」


ソル「にわかには信じられないな・・・」



エリアス「そのミカエルって人を探せれば・・・」


エアー「ああ。
    だが、見つけるのは不可能に近いな。目撃情報はこの数年一切存在しない。」



リーフ「そうなんだ・・・」


フリーズ「辛い状況らしいな・・・」



エアー「さて・・・俺はそろそろお前達の他の仲間を探しに行くとしよう・・・」


ライト「あ、そうだ・・・探さないと・・・」


エアー「いや・・・お前達にはここで待っていてほしい・・・」

ソル「え?」


ダークネス「大丈夫さ、反乱軍がほぼ総出で探してるからな。」

ライト「そうなのか?」


ボルテージ「そうらしいぜ・・・
      だけど暇で暇で。」


スピア「暇なら実戦訓練付き合ってくれよ」


全員「全力で遠慮させていただきます」



エアー「・・・あいつの実戦訓練を以前手伝ったら3ヶ月行動不能にされた。」


ダークネス「俺も巻き添え食らって2ヶ月行動不能だった。」



ウィンド「・・・」

スピア「あの時はやりすぎた。」





・・・・・・それから数時間後。



ウィンド「・・・スピア。」

スピア「ん?」

ウィンド「お前・・・いいのかよ?」


スピア「・・・時が来たらどうせ分かるだろ・・・
    今はその時じゃねぇよ。」




ウィンド「・・・」

スピア「・・・ま、今は2人しか知らない事実って事で・・・」




スピアはそれからすぐに寝始めた。


ウィンド「・・・隠す理由も無いのにもったいぶって・・・
     隠し事があった方がかっこよく見えるってか?」