第16話 スピードの意味 スピードにはとんでもない力がある。 スピアを退けたあの時を見れば、容易に想像がつく。 そうなれば、スピード1人でもソル達は全滅させられる。 スピア「・・・スピード。 お前の言葉って毎回わざとらしいんだが。」 スピード「・・・」 スピア「何か今回だけは本気のようだな・・・」 スピードは、姉を殺され、怒りに満ちていた。 大量の人間を虐殺した。 かつて。 大天使ミカエルが行方不明になった。 それはスピード達がミカエルを倒したから、のはずである。 じゃあ。 何で天使はその後沈黙した? エアーの話では、ミカエルはその戦闘の時こう言っていた。 ミカエル「嘘・・・だろ・・・? なんで俺達が・・・たった2人に・・・敵わない!?」 その話をソル達に語っている時エアーはこういった。 エアー「それ以降しばらくスピード達は息を潜めていた・・・ 多分ミカエルが何かやったんだと思う。」 あそこまで焦っていた奴が1人で何を出来るというのか? おそらくスピードはミカエルを倒しただろう。 ならなぜその後沈黙した? その後空間の天使を攻め、倒す。 スピードなら出来そうである。 そしてそうすればもはや地上は思うが侭、 生物の殺戮なんて楽なことだろう。 なぜ、そこで止まった? 理由は簡単だった。 スピードが何かに気付いたのである。 グランディア「ふん、英雄気取りか?」 ミカエル「さあな・・・ だが俺は・・・死んでもお前らを殺しに行く・・・」 スピード「やれるものならやればいい。 死から戻る事が出来るならな!!」 ミカエル「・・・戻るさ、俺は復讐を果たす・・・ 今の状況がいつまでも変わらないなら・・・俺は世界を守るため、 そして仲間を守るためにもお前達を殺す・・・!!」 スピード「!! 復・・・讐・・・?」 グランディア「ふん、綺麗事を・・・ 死ね!!貴様が消えればもはや脅威は存在しない!! これで・・・終わりだ!!」 スピード「復讐・・・俺のやっている事・・・それは・・・」 スピア「・・・その時、何かに気付いていたのか?」 スピード「・・・だけど認めたくなかった。」 スピア「・・・で、分かっていても止まらず、 そのままずっと戦いを続けてきて・・・命を消していった訳か・・・全く・・・」 スピード「・・・ その後も、誰にもその感情を見せないように接してきた。 お前も、俺がこんな事考えてるなんて全く思わなかっただろ・・・?」 スピア「・・・いや・・・? 俺は・・・実は気付いてた」 スピード「え・・・」 スピア「誰にも言ってないし、知ってるそぶりも見せてはいない。 俺は演技って案外うまい方なんだ。」 スピード「・・・そうか・・・」 スピア「俺はお前を憎んでる。 仲間に危害を加えたからな。 ぶっ殺したいと何回も思った。」 スピード「・・・だろうな・・・」 スピア「だが、この前、お前の不審な行動を見て、うっすら感づいた。」 スピード「・・・」 スピア「そう・・・お前は少し前にポケモンの世界に来ていた。 あの事件の時だ。 リミテッドに・・・力を注ぎ込み、そそのかしたのはお前だった・・・」 以前の話である。 ライト達「救助隊リバース」が、リミテッドという者と戦った。 リミテッド、とは、ライトの義理の兄であるヤイバの実の弟である。 スピードは、その時ポケモンの世界におり、 リミテッドに色々吹き込み、そそのかして、ライト達にけしかけたのである。 スピア「あの時違和感を感じた。 わざわざあの後俺の前に姿を現した。 あの時俺はしばらく警戒してた・・・」 スピード「当然だろうな・・・」 スピア「お前はどっちかというと確実性を求めるような奴だ・・・ あの時お前がとるべき行動は、 俺に気付かれないように、リバースのメンバーを1人でも多く消し去る事・・・ そうすれば敵対するであろう勢力を一気に減らす事が出来ただろう。 なのにそれをしなかった。」 スピード「・・・ああ。」 スピア「それがおかしい。おかしすぎる。 そもそもお前の強さならリミテッド経由は必要なかったはずだ。 なのにわざわざけしかけてきた。 その時点で俺はうっすらとだが、気付いた。 こいつはもう怒りなど、そんな感情は無いって・・・ それでもあの時街を壊したり・・・ 無理矢理にでも自分を奮い立たせてる・・・ 自分に正直になった方がいいぜ・・・スピード・・・」 スピード「・・・」 スピア「・・・それに、お前には分かってたはずだ。 お前の姉は復讐なんか求めていないって・・・」 スピード「・・・」 スピア「・・・俺はお前の想像以上に多くの事を知ってるんだぜ・・・? もう俺もあの時とは違うんだ・・・」 スピード「スピア・・・ ・・・もう今更やめても遅いよな・・・」 スピア「・・・遅くは無いだろ・・・」 スピード「・・・?」 スピア「・・・エアーとかは、お前に確実にかなりの敵対心を持っている。 だから・・・こっそり協力してもらえないか?」 スピード「・・・」 スピア「・・・スピード。 俺は知っている。 お前は本当は、誰よりも優しい心の持ち主だ、ってね・・・ お前の怒りも、その優しさが故・・・」 スピード「・・・!!」 スピア「お前の気持ちが痛いぐらい分かる・・・ 悲しみ・・・怒り・・・そして嘆き・・・ 俺がお前に執着していたのも今思えば・・・」 スピアは、ちょっとうつむきながら言った。 スピア「とにかく・・・協力して欲しい。 誰にも知られないように・・・。」 スピード「・・・スピア・・・」 何でもっと早く気付かなかったんだろう。 自分を騙し続け、そして大量に命を奪ってきた。 全て、怖いから。 自分が自分であるにはそうしなくてはいけないと思っていた。 それに、護身のためでもあった。 愚かな事、だった・・・ 気付けば、涙が溢れ出ていた。 気付けば、抱きついていた。 気付けば、2人は・・・ ウィンド「戦闘してるのかと思って外に出たらすごく別の場面でした」 ・・・ スピア「!!!!」 スピード「!!!!!!」 気付けば2人はそのまま固まってしまった。 ウィンド「・・・いや、他言なんかしないって・・・ 普通に見れば何もおかしくない場面だと思う。」 すぐに2人は固まっていた状態から冷め、弁解を始めた。 スピア「いやっ、こっ、これは・・・!! 決してそういう場面ではなく・・・!!」 スピード「そ、そう!! べ、別にそういう訳じゃない!!」 取り乱しすぎである。 ウィンド「・・・いや、そんな弁解する必要もないと思うんだが・・・ まあ、他の奴等に見られてたらやっべぇけどなあ・・・」 そう思ってウィンドが後ろを振り向くと・・・ エアー「・・・」 ダークネス「・・・」 カルテット「・・・」 エメリア「・・・」 ライト「・・・」 ボルテージ「・・・」 フリーズ「・・・」 ウイング「・・・」 フォルス「・・・」 ソル「・・・」 ブルームーン「・・・」 ウィンド「何てこったい!!」 スピア・スピード「ぎゃああああああああああああああああああああ!!」(赤面通り越して真っ青 エアー「・・・ああ。 抱きつくまでの仲か。 そうか、何も言うまい。」 ライト「スピア・・・」 スピア「ぁぁぁぁ・・・」(大後悔 スピード「・・・人間も天使も汚いです」(涙が止まりません ウィンド「ち、違う・・・スピアは決してそういうのじゃないから・・・ はっきり言うけどなぁ!! スピードは女だぞ!?」 エアー「!?」 ダークネス「!?」 カルテット「!?」 エメリア「!?」 全員「な、なんだってえええええええええええ!?」 ウィンド「口調とかから誤解されがちのようだが、そうなんだぜ!?」 かくして。 2人は質問攻めに遭う事になってしまった。 スピードは敵だった。 許す事の出来ないはずの敵だった。 だけど、関係はふとした事で大きく変わる。 誰もがもう分かっていた。 もうあいつは敵じゃない・・・ 恨むべき相手でもない・・・ もう、仲間だって。 質問攻めに遭っていたスピード。 スピード「俺は、お前らを・・・!!」 エアー「・・・結婚式には呼ぶといい。」 スピード「くっ・・・貴様・・・!! ぶっ殺してやる・・・!! 汚い・・・何もかも・・・!!」 そうやって、以前のように言っていた。 だけど・・・。 その顔は笑っていた。 もう、何も恐れる事は無い。 もう、演技なんてする必要はない。 もう、自らを縛るものは無い・・・。 天空 グランディア「スピードが・・・いない?」 ギガ「何処へ行った!!」 フィラネス「グランディア・・・ どうやらスピードは裏切ったようだな?」 グランディア「!? な、何だと・・・!? 奴の人間に対する怒り・・・ それはそこまで簡単に・・・?」 フィラネス「考えてもみろ。 あれから数千年も経っている。 その怒りが続いていると・・・思うか?」 グランディア「ぐっ・・・!!」 ギガ「ど、どうする・・・? さすがにスピードが敵になったんじゃ・・・ グランディア「こんなはずでは・・・!! だが・・・結果は変わらない・・・ まだ・・・序章に過ぎないのだよ・・・!! グランド・フォースも1つ手中に収めた・・・ 奴等に未来は無い!!」 エアー「俺達は勝つ事が出来る・・・ 未来を俺達が作り出す・・・!! 奴等に負ける事は無い!! 絶対に、だ・・・!!」 遥か彼方。 ある物語があった。 今では誰も信じようとしない。 でも、確かにあった話である。 今こそ、語ろう。 『グランド・フォース』を・・・