第31話 漆黒の飛翔


ティルヴィング「・・・?」

ウィンド「(俺だって必死だから。)」


出番減少を食い止めようと。



ウィンド「(っていうか体の支配権長い間持ち過ぎだろ・・・
      そろそろ返してくれよ・・・)」


ティルヴィング「・・・うん。」





そんなこんなで、再構築解除。ウィンド復活。




ウィンド「よし!」

ティルヴィング「・・・必死・・・」



ウィンド「いやそれだけじゃないから。
     それにはっきり言っちゃうとこの流れが終わると全く目立てなくなるから勘弁してくれ。
     後何話分だろう。」


ティルヴィング「・・・・・・必死・・・・・・」





ウィンド「で。さっきグランディア堕ちただろ?」

ティルヴィング「うん。」


ウィンド「・・・グランディアって、既に死んでるらしい。
     お前も聞いた事あるだろ?」



ティルヴィング「・・・」



グランディアはこの世に居ない。


以前、ミカエルがダークネスに話していた事である。


当然、この2人も知っているだろう。





ティルヴィング「・・・それで・・・?」


ウィンド「まずい事になったかもしれない。
     それが起きる前に・・・手遅れになる前にやらなくちゃいけない事がある。
     えっと・・・」




ウィンドは、オーブのような物を取り出した。



ティルヴィング「それは・・・」



ウィンド「空間の天使に呼びかけるためのオーブ。」


そう言うと、そのオーブに向かって何かを喋りだした。

かなり小声で、ティルヴィングにも聞こえなかった。


そもそも喋っていたかも分からないぐらいである。





ティルヴィング「・・・?」

ウィンド「これで準備出来た。
     不慮の事態の発生に備えて準備するのは生死を分ける重要事項。」



ティルヴィング「・・・不慮の事態に直撃して真っ先にやられそうな人が何語ってるの?」




ウィンド「ごめん。」







フリーズ「お前ら・・・何故コントをやっている?」




何だこれは。




フリーズ「とにかく・・・静かにしろ。
     一体何なんだお前らは・・・」



ティルヴィング「神剣。」

ウィンド「空間の天使・・・の唯一のそれ以外の仲間。のはず。
     これってすごいよな?」




黙った方がいいんじゃないか?





フリーズ「・・・まあいい。
     しかし、グランディアが死んでいる、というのは・・・?」



ウィンド「うーん・・・冷静に聞けるか?」


フリーズ「当然だ。」



ウィンド「じゃあ・・・」



バサッ・・・


ウィンド「昔この世界には天使と対極になる者がいた・・・」



バサッ・・・


フリーズ「天使の対極・・・」



バサッ・・・


ウィンド「そう。
     闇の力を秘めた者。それは・・・悪魔。」



バサッ・・・


フリーズ「天使と、悪魔・・・」



バサッ・・・


ティルヴィング「・・・?
        何か、聞こえない・・・?」



バサッ・・・バサッ・・・



フリーズ「・・・?
     羽ばたく音・・・?」



ウィンド「え?
     ちょっと・・・早すぎるんじゃ・・・」

フリーズ「・・・何が、だ?」




ウィンド「本題から言ってしまえば・・・」







グランディアが落ちたその場所から・・・黒い羽が見えた・・・!!




フリーズ「・・・なるほど・・・
     つまり、そいつが・・・」




漆黒の髪・・・紅く輝く目・・・



ティルヴィング「敵の正体・・・
        グランディアは、体を利用されていただけ・・・」




冷酷なる笑みを浮かべる謎の男・・・





ウィンド「「グランディア」が消えた事により正体を現す者・・・!!」











ウィンドは、精一杯ティルヴィングを振りかざした!!




???「こざかしい・・・」






強烈な風圧が謎の男を襲う・・・!!




フリーズ「・・・」




???「雑魚が・・・」



だが、風圧は跳ね返ってきた。





ウィンド「!!
     やっぱ、無理か・・・!!」




風圧をまともに受けてしまい、ウィンドは吹き飛んだ!!




フリーズ「・・・!!
     大丈夫か・・・!?」



ウィンド「くそっ!!
     だが、自分で発生させたのを食らったぐらい・・・」







???「なら、これでどうだ・・・?」








一瞬の闇の閃光。




そして全ては砕け、フリーズとウィンドは意識を失い落下した・・・

ティルヴィングも持ち主と共に・・・そしてスピードは何も知らずに・・・
















そしてその時、先頭を突っ走っていたミカエルが即座に異変に気付いた。





消えたはずのエネルギーが増幅している。



そして何より、仲間の身に起きた異変を即座に感じ取った・・・







ミカエル「!!」


ソル「ど、どうしたんだ!?
   急に立ち止まったりして!!」





ミカエル「・・・まさか!!」







???「その通りだ・・・ミカエル。
    仲間と共に落ちよ・・・」

























反乱軍本部付近



ボルテージ「くっそ、何で俺がこんな役回りなんだよ・・・
      ふざけんなよ?」



ボルテージは、本部周辺をウロウロしていた。


そしてたまたま会った、レーヴァテインの持ち主である赤髪の天使に不満を漏らしていた。






?????「落ち着け・・・」



ボルテージ「第一、こんな役回りならそもそも出すなよって話だ!!
      それに・・・うんたらかんたらぶつぶつぶつぶつあーだこーだ」



?????「(・・・俺に言われてもどうしようも無い話なんだが・・・)」



そりゃあ困る。



その時・・・空から何かが降ってきた。







ボルテージ「ん?何か降って来る・・・って人!?
      何で人が・・・!?」




?????「・・・ライト!」






ボルテージ「はぁ!?」






赤髪の天使は、落ちてきた人々をことごとく受け止めた。


目にも止まらぬ速さで移動していたのである。

























ソル「う・・・うーん・・・」


ライト「こ・・・ここは・・・?」





?????「目が醒めた様だな?」




ライト「うわっ!?
    な、何だよお前!!」



?????「そうびっくりするなよ。
      結構心配したんだからな?」


ライト「い、いや・・・誰かよく分からない奴にやたらと心配されても・・・」


?????「知らない・・・ねぇ・・・」



ライト「??」






それから、全員が集合した。


ところどころ抜けている者もいるが・・・





エアー「・・・簡略化して言うと、天空が崩壊した。
    俺達のいた砦も、お前たちの向かった最上層部も、全部、だ・・・
    そして、俺達はたまたまここに落ちたが・・・カルテットがいない。
    それに、俺達以外は何処かに落ちた痕跡も無い。
    不自然な話だ・・・」




ダークネス「そもそも、何で崩壊したんだ・・・?」




フリーズ「・・・
     グランディアを殺した事により、何かが開放されてしまったらしいな・・・」



エアー「・・・!?
    何だと・・・どういう事だ!?」





フリーズ「・・・どうやら、奴自身は本当は死んでいるらしくて、
     体を動かしていたのは別の存在だったらしい・・・」


ダークネス「ま、まさか黒幕がいるのか!?
      グランディア倒したら終わりとかじゃなくて、か・・・?」






ミカエル「まさか・・・


     俺が、奴を滅多切りにした・・・それが原因か・・・」




ライト「お、おい。
    そこまで責任感じる必要は無さそうだが・・・」



フォルス「ああ・・・どっちにしろこうなっただろうな・・・
     もし、奴を倒す事がその何かを開放させる条件だったなら・・・」






ウイング「話が飛躍しすぎてて分からないよ・・・」

フォルス「実際、本当に俺達自身ですらよく分からないからな・・・
     簡単に言うと、黒幕がいたって所か。」


フリーズ「本当に簡単に言ったな・・・」




エリアス「ど、どうするの?」


ライト「あんな広い場所をぶっ壊すなんて、ちょっと想像もつかないレベルだと思うんだが・・・」





ソル「そもそも、そいつは誰なんだ?」


ブルームーン「なんっつー名前でどんな奴か。」






ミカエル「・・・そうだな、今から話そう・・・
     この事件の本当の黒幕・・・全てを操っている者・・・」









その頃。



スライサー「まさかここまで壮大な事になっているとは・・・」


ボルト「・・・ついていけなくなったな。」





スライサー「それにしても・・・起きないな。1人だけ・・・」




先程吹っ飛ばされたウィンドが目を醒まさない。



ボルト「ま、まさか・・・死んでたり・・・?」



スライサー「在り得る話だ・・・」






さて・・・



ミカエル「・・・世界を、そして時空を破滅へと導くもの・・・
     それが・・・悪魔王サタン、だ・・・」




ソル「悪魔王・・・」


ライト「サタン・・・?」





エアー「初耳だな・・・」


ミカエル「そりゃあ当然だ。
     地上に知っている奴なんて皆無だろう・・・
     それぐらい、表に出ていない存在だ。
     だが、確実にその魔の手は伸びていた・・・」









その日の夜。





エアー「呼吸、脈、止まってるな・・・これは・・・」



ダークネス「・・・まさか・・・マジで死んでるんじゃ・・・」






ウィンドが起きない。やっぱり起きない。






ティルヴィング「ウィンド・・・」



ライト「・・・」


ウイング「・・・暗いね・・・
     まあ・・・そうだよね・・・」






エアー「それに、一緒に突入した天使達の9割方は死んだ・・・
    自身でも嫌になるほど暗い気分になる・・・」







ウイング「あれ、でも・・・確か、死んでも1度だけなら復活・・・!!」



ミカエル「・・・並大抵の奴の精神力じゃ不可能だ。
     ・・・ウィンドは精神力が弱い・・・更に・・・1人だけで突破できるほど甘くはない」






ティルヴィング「・・・」









エリアス「もしかして・・・このまま・・・みんな死んじゃうのかな・・・」









全員「・・・・・・」










雰囲気は最悪だった。




夢も希望も何も無い。



このまま行けば、例えこちらから動かなくとも全滅必至である。







もはや1人の死とかそんな物がどうでも良くなって来るほど、絶望に打ちひしがれていたのである。









スライサー「・・・このまま、そのサタンとやらが暴れまわって、
      世界、空間、果ては時空まで全てが終わるというのか・・・

      全ての生命、全ての希望、全ての思いが潰えるというのか・・・

      何も知らずに平和に暮らしている奴等はどう思うだろうか・・・
      先程までのんびり暮らしていたのに次の瞬間には死んでいた、とか、な・・・

      もし、本当に神がいるのなら問いたい・・・
      何のために命を作ったんだ、と・・・」







リーフ「国とか・・・民とか・・・
    復讐しようと思ってたけど・・・やる気失せちゃったな・・・
    わたし・・・もう嫌・・・」





エアー「俺達の行動が・・・これまでの行動が全て無駄だったと言うのか・・・
    長い時は・・・全てが無駄だったって言うのか・・・」





ダークネス「どうしようもねぇ・・・どうしようもねぇよ・・・
      一体これからどうしろって言うんだよ・・・」





ソル「故郷が壊されて・・・怒りに燃えて・・・
   そして、待ってたのはこんな終わり・・・?
   そんなの・・・酷すぎるぜ・・・」





ブルームーン「何も考えなきゃよかったかもしれない・・・
       こんな事になるぐらいなら・・・」






ライト「これまで・・・何度も困難に立ち向かってきた・・・
    だけど・・・これは・・・無理だ・・・打開できない・・・」





フォルス「諦めるな、っていつもなら言うが・・・
     同意見、だな・・・」












重苦しい・・・と言うより、諦めの念が漂う。





しかしその時。







ミカエル「・・・だが、このタイミングで客のようだぜ?」




エアー「・・・?」



そこにいたのは・・・誰か分からない謎の3人だった。







ダークネス「だ、誰だお前・・・ら・・・!?」



ダークネスは何気なく見覚えがあった。



確か―――





スピア「こいつが・・・ゼウス。

    この空間を統べる神さ」







ダークネス「そ、そうか・・・!
      空間の神・・・!!」






空間の神・・・ゼウス。


彼が反乱軍本部を何故か訪れてきたのだ。






エアー「何だと!?
    じゃあ・・・その横の2人は・・・」





ミカエル「ラファエルと、ガブリエルだ・・・
     かつての戦いで一緒に戦っただろ?」







ラファエル「・・・また、敗北したようだな。
      まあ、奴相手では仕方ない・・・」






ライト「・・・誰か知らないけど、わざわざそんな事を言うために来たのか・・・?」





フォルス「(・・・?
      何か・・・あいつを見ると・・・違和感を感じる・・・
      何か・・・知っているような・・・だけどあんな奴は見た事無い・・・)」



エリアス「(あっちの女性の天使・・・
      何か・・・知っているような・・・知らないような・・・)」







ラファエル「そういう訳ではない。
      ちょっと・・・そっちに用があってな。」








事実上、死んでいるウィンドに彼等は近づいた。



ラファエル「全く・・・呼ぶのが遅かったな・・・」

ガブリエル「・・・どうするの?」


ゼウス「この修羅場において神剣使いに死んでもらわれては困る。
    ラファエル、ガブリエル・・・死後の世界から連れ戻して来い。」



ラファエル「・・・はい。」




すると、ラファエルとガブリエルは光を放ちつつ何処かへ消えた。





ミカエル「待てよ、俺も行く!」



ミカエルも消えてしまった。






ライト「し、死後の世界から連れ戻す・・・!?」



ソル「そ、そんな事あるのか!?」


ウイング「・・・わたし達も1回死後の世界から戻った事があるけど・・・
     無理矢理戻すなんて・・・出来るの?」







ゼウス「死後の世界に限度を超えて留まった1人の青年を、この前生き返らせた。
    ・・・今そこにいる赤髪の天使だ。」






?????「・・・」


ボルテージ「・・・マジ?」





ゼウス「あまり行使し続ける事は出来ないが・・・数人までなら許容範囲だ。
    安心するといい・・・」







スライサー「だが、サタンを倒さない限りは確実に全滅するんだろう・・・?」











死後の世界



ウィンド「こんな形で出てもなあ・・・」



ため息をつきながらぐちぐち言ってた。




ウィンド「全く、あんなのに俺だけで勝てる訳無いだろ・・・っつーか、
     あんなの勝てないだろ・・・
     酷いよなー・・・

     ・・・死んだって事はこれ以降ずっと1人かよ・・・嫌だなあ・・・

     ・・・だけど以前ライト達が自力で戻ったって・・・
     どうすりゃいいんだろうな?」




思案を巡らせるものの、答えは浮かばない。







そんな時。




ラファエル「呼び出してきたから・・・来てやったぞ・・・」



ウィンド「(ビクッ)うおおおおおおお!?
     な、何だよいきなり!!
     お前!ビックリするじゃないか!!」





ガブリエル「・・・大丈夫?」


ウィンド「・・・一斉に来たのかよ。」




ミカエル「俺もな。」


ウィンド「やっぱりな。」

ミカエル「分かってたのか?」

ウィンド「他の誰か1人でも来たらお前は来ると思った。」







ラファエル「さて。お前を無理矢理にでも死後の世界から連れ戻さなくてはいけない。」


ガブリエル「だからこの際我慢してね。何でも。」



ウィンド「我慢って、お前ら何する気だよ。
     死んでなお苦しみを味合わせる気かお前らは。」





ラファエル「さて・・・その前に。
      せっかくだから質問。」


ウィンド「ん?」





ラファエル「Q1・最近自分が力不足だと思わざるを得ない」


ウィンド「うっ・・・」



ラファエル「Q2・というかぶっちゃけ自分が足手まといな気がしてきた」


ウィンド「ぐっ・・・



ラファエル「Q3・ティルヴィングに任せた方がはっきり言ってマシだと思う」


ウィンド「ぐふっ・・・」



ラファエル「Q4・俺達空間の天使との実力差によりセリフは多くても目立ちにくくなってると思う」


ウィンド「・・・」



ラファエル「Q5・というか特徴が無い」


ウィンド「ううう・・・」



ラファエル「Q6・以前、能力が即粉砕されて悲しい」


ウィンド「本当に。」



ラファエル「Q7・「っていうか俺いらなくね?」的な感情に囚われ始めた」


ウィンド「A・全部YES」





やられ役のボルテージよりまずい立場だもんな。(ぁ






ラファエル「・・・やっぱり目立たなくて弱くて脆くていらない存在か・・・」




ウィンド「・・・本当にお前は俺を苦しめに来たんじゃないか、としか思えないんだが・・・」




ガブリエル「でも、実力無くて目立たないんだったら、力を手に入れれば解決するから・・・」


ウィンド「それが出来たら苦労しないんだが?」





ミカエル「俺・・・この前お前に言ったよな。」


ウィンド「ん?」







以前・・・




ダークネス「・・・お前ら、一体何なんだ?
      普通の人間じゃ・・・ないのか?」


スピア「ま、すぐ分かる事さ。」

ウィンド「俺は普通の人間だけどな。」


スピア「今はな。」

ウィンド「は?
     な、何言ってんだお前は・・・」


スピア「ははは。ま、今の言葉覚えておいてくれ。」









ウィンド「お、おい、お前ら、まさか・・・」


ミカエル「ま、これで悩みは解決されると思うし、元の世界に復活出来る。
     いい事だらけだろ?」



ウィンド「冷静になれ。
     俺がそんなの使え・・・」




ラファエル「使いこなせなくとも、神剣使いに死んでもらっちゃ困るからな。
      使おうが何だろうがいい、行くぞ!!」






ウィンド「マジかよ!?」