第35話 スライサー、希望 サタン「恐怖の呻き、怒りの叫び、絶望の声・・・ さあ・・・もっと聞かせてくれ・・・」 遂に始まった世界滅亡へのカウントダウン。 誰もが、それを見ている事しか出来なかった。 数多の異世界に存在する、数々の勇者達、魔王、光、闇・・・ その全てが黙って消されていくばかりだった。 少しの抵抗すらも許さない最強にして最悪の攻撃。 時空が滅びるまで、一刻の猶予も無いだろう・・・ ゼウス「・・・サタン・・・ここまでの・・・力とは・・・」 空間1つを統べる、全知全能の神ですら何も出来ず、倒れているのみ。 自らの世界―――空間が消えていくのを見ている事しか出来ない。 それは・・・まさに、拷問だった。 ゼウス「貴様は・・・わざわざ、死ぬ直前に留めて・・・これを見せようと言うのか・・・」 サタン「ククク・・・ さあ・・・ゼウス・・・貴様も叫ぶがいい。 自らの作り出した空間、そして命が消え行くのを見て・・・ 絶望・・・それこそが我が最大の至福・・・」 ゼウス「・・・ぐっ・・・」 ゼウスは、倒れているガブリエルとラファエルを見た。 2人とも、何とか生きていた。 ラシエルを見た。 一応ちょっとぐらいは動いている。多分生きてるだろう。 そして、ミカエルを見た。 全身、ボロボロで・・・その翼も既にズタズタになっていた。 彼は全く動かない。 もしかしたら、自らを超えるかもしれない力を持ったその者が、 今、生きているかすら分からない。 ゼウス「ミカ・・・エル・・・」 彼は、ピクリとも動かない。 サタン「さあ! 次は・・・」 スライサー「・・・忘れてくれるなよ? サタンとやら・・・」 サタン「・・・?」 スライサー「・・・天使だけじゃない。 まだこの俺がいる。この俺が残っている!!」 サタン「・・・何を言うかと思えば・・・ 愚の骨頂だな・・・ただの若い人間風情がこの我に挑むか?」 スライサー「ああ。」 サタン「・・・そこにいたなら見ただろう? 我の力を・・・」 スライサー「ああ。」 サタン「だというのに・・・挑むというのか?」 スライサー「その通りだ。」 サタン「く・・・っくくく・・・ 舐められたものだ・・・ただの愚かな人間ごときにそこまで言われるとは・・・ いいだろう!! 後悔処刑だ・・・」 その頃。 エアー「・・・黒い光が止まった? ・・・あれは!?」 スライサー「・・・」 サタン「死ね!!」 スライサーに黒い光が放たれた。 ソル「スライサー・・・!?」 スライサー「くっ・・・」 自らの元々持っていた剣と、ゼウスから渡された剣・・・ 2つの剣で彼は黒い光を弾いた!! エアー「!?」 ソル「ス、スライサー・・・す、すげぇ・・・」 スライサー「・・・人間風情に攻撃を弾かれてるじゃないか。 スタミナ切れでも起こしたか?肉でも食えよ・・・」 サタン「・・・まさか、ただの人間に攻撃を防がれるとは・・・!? だが・・・!」 ソル「あいつ・・・本当に・・・」 ダークネス「無茶な事をしやがる・・・」 ブルームーン「・・・何であいつ、あんな必死になって戦ってるんだよ・・・ 負けるに決まってるのに・・・!!」 ライト「・・・諦めてないのか・・・あいつ・・・」 フォルス「・・・諦めない心、か。」 ボルテージ「だけど諦めが悪いだけだろ!?あれは!!」 エリアス「・・・でも」 ボルテージ「ん?」 エリアス「・・・彼は・・・スライサーは・・・ 勝つ気でいるよ・・・何か・・・伝わってくる・・・ 熱い心・・・ちょっと違うかもしれないけど・・・ 希望が・・・」 ボルテージ「はぁ!? 発狂してるだけじゃないのか!?おかしくなっちまったんじゃないのか!?」 ソル「スライサー・・・本当に、俺達に・・・ ・・・・・・ 本気だったんだな・・・俺達のために・・・」 ブルームーン「・・・ソル?」 ソル「・・・はっきり言って、あんなのに勝てるわけないか・・・」 ブルームーン「そりゃな・・・」 ソル「・・・分かった。行く」 ブルームーン「・・・は? ・・・馬鹿か?馬鹿かお前? 何考えてんだそれ?つまり行くだけ無駄・・・」 ソル「だけど・・・あいつを見てたら何かやれるかもしれない気がしてきた」 ブルームーン「・・・単純すぎる・・・俺より単純だこいつ・・・」 地獄 スライサー「・・・本気か?」 サタン「・・・本気など出すわけ無いだろう・・・? だが、もし塵も残さず死にたいのならあいつのようにしてやってもいいぞ・・・?」 サタンは、ミカエルを指差した。 スライサー「・・・どっちみちこの地獄から元の場所へは戻れない。 勝ったとしても行き着く先は永遠の死・・・なら、そんな物を恐れる必要は無い!!」 サタン「!!」 サタンは、ここで初めて脅威を感じた。 真に恐れるべきものは、力でも、天使でもない。 これである。「死を恐れぬ心」 サタンにとって、これほど嫌な物は無いのである。 サタン「なら・・・!」 サタンは、黒い光をスライサーに向けて一気に放った!! そしてまた、反乱軍本部 ソル「・・・俺は行く! 行くっつったら行く!!」 ブルームーン「落ち着け!! そもそも行く術が分からないのに行ける訳無いだろ!!」 ソル「う・・・」 しかしその時。 デュランダル「今こそ、この力を使う時・・・」 ソル「?」 クラウソナス「しょうがないから、神剣の真の力を見せてやる!!」 ティルヴィング「・・・」 ラグナロク「全く、置いていったのは幸運か不運か・・・ ・・・我等神剣の力で、地獄への空間を開く事が出来るだろう。 4本もあれば・・・十分だ。」 ソル「そ、そうなのか!?」 ティルヴィング「・・・だけど。 一方通行なのは変わらない・・・」 ソル「構うか!! 俺は行く!! たとえ1人でも・・・」 ブルームーン「―――っ、さっきまで落ち込んでた奴が急に活気付きやがって・・・ こうなったら、俺も行ってやるぜ!!」 ライト「俺達も行く・・・!! そこまで希望に満ちてるの見たら何かやれる気がしてきた・・・ それに、仲間を助けるためだ!!」 ボルト「救助隊、だからな。俺達は」 リーフ「わたしも行く・・・ 国の復興のために・・・倒さないといけない・・・!!」 焔火「全員行く雰囲気なら・・・俺もだな。うん。」 ソル「み、みんな・・・!! ・・・立ち直り早いな」 ブルームーン「へっ!お互い様だ!!」 エアー「お前達・・・ ・・・俺達が巻き込んだも同然だ・・・ついていかせてくれ・・・」 ダークネス「・・・消えたカルテットや、見つからないエメリアも地獄にいるかもしれないしな。」 デュランダル「どうやら、全員行くようだな・・・? なら・・・今から地獄への道を開こう・・・」 すると、ソル達の周囲の空間が歪み始めた!! その時・・・ ファヌエル「本当に行くのか?」 そう、もう1人の存在。 ソル「・・・行く!!」 ファヌエル「そうか。黙って、聞かせてもらったが、本気だな。 ・・・ライトも。」 ライト「・・・あんたは、俺にとって1つの希望になりえる・・・」 ファヌエル「・・・」 ライト「だって・・・あんたは・・・やっぱり・・・」 ファヌエル「それ以上、言うな。 ・・・ま、勘付いた通りだ。いつ気付いたか知らないが・・・神剣の暴走の時か?」 ボルト「・・・お前、やっぱりそうなのかよ? まさか、死の淵から蘇って・・・」 ファヌエル「・・・ま、俺は戦いがどうなったかぐらいは見させてもらうさ・・・ 今、空に地獄は浮かび上がっている・・・ここからでも見えるからな。 ・・・あんまり長い間ここにいちゃ、弟をまた孤独にさせるからな。」 ウイング「・・・ヤ・・・」 デュランダル「さあ・・・行くぞ!!」 その時、ソル達を強烈な光が包み込み、次の瞬間には消えていた!! ファヌエル「・・・がんばれよ・・・」 そして、最終決戦が始まる―――