第57話 過去の日々


ミカエル「…昔は、こんなゆっくりしていた事は無かった…」

オリフィエル「…長い間生きてたなら少しぐらいゆっくりしていた時ぐらい…」


ミカエル「精神的に、さ。
     以前はよく話す相手もいなかったし、な。」



オリフィエル「…そうなのか」


ミカエル「そもそも、な。」






遥か前…


天空の天使との戦いにおいて…

グランディアに敗北したミカエルは、地上へと落ちた。

敗北と言っても、グランディアに痛手を与える事には成功したが、

翼を痛め、そのまま真っ逆さまに落ちて行った。




ミカエル「(こりゃ…駄目かな…空間の天使といっても、この程度か…畜生)」







しかし、長い時がたったと思った、その後…



ミカエル「…?
     あれ、ここは…?」



????「目を覚ましたか?」


ミカエル「…誰だ?」



????「誰だって…一般人だよ、天使様…」


ミカエル「……」








オリフィエル「…何いきなり過去を語っちゃってんだお前は…」


ミカエル「いや…たまには過去を見つめなおすのもいいかな、と思って」

オリフィエル「ああ…そうか…

       あの時倒れてるのを放っておけば面倒事に巻き込まれなかったかも」


ミカエル「言ってくれる…」








????「無理するなよ、そんな怪我で…」


ミカエル「行かなくてはいけない所が…倒さなければならない者がいる…!」


????「そうは言うけど天使様、そんな怪我で倒せる相手なんているのか?」



ミカエル「うるさい…黙れ!
     嘗めるな…この俺を…!
     この…ミカエルを…!!」



????「いいからじっとしてろ!」



その人物はミカエルを無理やり横に倒した。


ミカエル「いてっ…」


????「この程度で痛いんだろ?
     じゃあ無理だ…その何者かを倒すまでの時間を短くしたいなら回復してからにしろ!」



ミカエル「……くそっ」







????「…で、一体何故天使様が倒れてたんだ?
     本来なら空高くに居なきゃいけないと思うが?」

ミカエル「…倒せなかった敵がいる…」

????「さっきのと同じか。
     つまり負けたんだろ…」


ミカエル「…力不足だったんだ、全然足りない…
     もっと力を…力が欲しい…
     力さえあれば奴を倒せるんだ…」


????「単純だな…力を得てどうするんだよ?」


ミカエル「…言っただろ…敵を倒すって」


????「強すぎる力は時に人を変える。
     天使様はどうか知らないが、ね…」


ミカエル「力にのまれるのなんて…欲望に満ちた一部の存在だけだ…」


????「そうか?
     お前も恐ろしいほど、力に対する欲望があると思うが…?」


ミカエル「何だと…?」



????「……」





それから数日…


ミカエル「ウィンドって言ったな…まあ礼を言おう。
     大分回復した」


ウィンド「そうか? まだ結構残ってそうだが…それでもすごい回復力だな…」



ミカエル「…こんな所で寝てる訳には行かないんだ」


ウィンド「…そうなのか。」




ミカエル「俺が奴を倒さないと…」

ウィンド「誰が決めたんだ?」


ミカエル「……?」

ウィンド「その相手をお前が倒さなきゃいけないって、誰が決めたんだ?」



ミカエル「……それは、運命に決められている事さ。
     それに、空間天使の使命は、空間を守る事…」



ウィンド「使命だなんて、誰に決められたんだ?」


ミカエル「そんなの…知るか」

ウィンド「…分からないのか。
     じゃあ、そこまで気張る必要は無いだろ。気楽に行けよ?」


ミカエル「気楽にって…この世界の命運もかかってるんだぜ…下手をすれば。
     お前だってこれによって死ぬかも…」


ウィンド「…」


ミカエル「それぐらいの事だから、な。
     この命と引き換えにでも…倒す覚悟がある」


ウィンド「そうか。
     ……はぁ」

ミカエル「?」


ウィンド「結局死なれたら助けた意味が無いじゃないか」

ミカエル「な、何だよ…」



ウィンド「…ああ、そうか。
     命と引き換えって事は、100と100…
     そこに1でも加えればお前が死ぬ事は無くなる」


ミカエル「…?」


ウィンド「…そうだな。それしかない。
     俺はお前について行かせてもらう、天使様…」


ミカエル「何!?」



ウィンド「だって、助けた奴が死んだら気分悪いし…
     お前だって少しぐらい長く生きたいだろ?」



ミカエル「…まあそうだけど」

ウィンド「力が欲しいなら、俺が力になる」



ミカエル「……勝手にしろよ」








オリフィエル「そんな事言ってたのか…覚えてないぞ…」


ミカエル「あの頃のお前の方が今のお前より頼れたかもな」

オリフィエル「酷いな…」


ミカエル「まあ、人は変わる。俺もあの頃とは随分変わったんだろうな…」


オリフィエル「ああ。全然違う」

ミカエル「…どんな風にだ?」


オリフィエル「あの頃は無表情だったぜお前」

ミカエル「…そうだっけっか?」


オリフィエル「ああ。たまにある笑顔も、心からじゃなかった。
       あの頃のお前は、何もかもから距離を置いていた。
       全てにおいて機械的で、冷たい…血も何も流れてなさそうなほどに。」

ミカエル「そこまで言うか?」


オリフィエル「…今のお前とあの頃のお前で決定的に違うのは、仲間の事だがな。」


ミカエル「…」


オリフィエル「お前はあの頃、あくまでも運命だと割り切っていた。
       だけど今は仲間のためにも、戦っているじゃないか…全然違う。
       今のお前の方が強いしな」



ミカエル「あー…」




オリフィエル「あ、そうだ…俺、ティルヴィングを…
       持ってくる…っていうか、呼んでくる、っていうか…」


ミカエル「そこで空間の力を使えば楽勝だな。」


オリフィエル「なるほど。」






数分後


ティルヴィング「ウィンド…!?
        その翼と輪は…!?」


オリフィエル「まあ色々あってな…
       そういえばこの前も一回お前を持った気がしたが、」

ティルヴィング「そうだっけ…?」


オリフィエル「(寝てたのかこいつ?)」



ミカエル「…そういえばお前、いつからそいつと…」


オリフィエル「そういえば面倒で話して無かったけど…」