第62話 ANGEL FORCE オリフィエル「後ろから何か来るぞ!?」 ラファエル「…? 何も見えないが?」 アナエル「どうしたの?」 オリフィエル「いや…何ていうか、風の流れが変わったって言うか…その… そういうのが何故か分かるようになった」 ラファエル「天使化の影響か…?」 スライサー「いたか……!」 三人の天使達の後方から飛空挺が飛んできた! ラファエル「あれは!?」 飛空挺は、三人の近くで停止した。 ラファエル「お前は!」 スライサー「飛んで行かれたら俺は困るんだがな…まあ、既に解消された問題だが。 なかなかの性能だ…お前たちも乗れ。方向を教えろ」 何処かの場所 サマエル「…くくく…ふはははははは!! 一撃だと!? 笑わせ…」 ミカエル「真剣だぜ。 本当に一撃で決めさせてもらう」 裂け目からはかなりの力が感じられる… サマエル「ならばやってみるといい! その前に貴様の魂は我が物となるがな!!」 サマエルは鎌を振り上げ、ミカエルを斬り裂こうとした! ミカエル「近くに誰もいないなら、遠慮なく行ける…… これが俺の全力だ!」 ミカエルは、裂け目に片手を入れ、もう片方の手を前に突き出した。 サマエル「…何だ?」 ミカエル「これだけ騒がせてくれた奴を一撃で落とすのも少し気が引けるが…… 俺はサタンに対してあまりにも無力だった。 あの時、俺は思った…「力が足りない」。 だから俺はより、強さを求め…そして俺は力を得た。」 サマエル「…くくく、走馬灯でも流れたか? それもいいだろう…」 ミカエル「自身を、そして側にいる仲間をも傷つけてしまうかもしれない強大な力… でも…そう、それでも力が欲しかった… …仲間を守るためには力が必要なんだよ!! 解き放て、「時空波」!!」 気付けば、前方にエネルギーが集束していた… サマエルが気づいた時には… サマエル「な、何だその力は!?」 ミカエル「空間からのエネルギーを全開で放つ…!! 悪いな、かつての友よ…苦しむな!!」 そのエネルギーが解き放たれようとした…その時! ラファエル「あそこだ、スライサー!」 スライサー「交戦中か…」 サマエル「ぐっ、援軍だと!?」 ミカエル「何!?」 サマエル「ぐ…? 何故、貴様が焦る? こっちは敵が増えたのだが、貴様は味方が増えたと…」 ミカエル「近づくな!」 ラファエル「…?」 しかし、エネルギーは解き放たれた。 オリフィエル「あいつ、まさか…!? スライサー! 急いで離れるんだ!」 スライサー「…どういう事だ?」 アナエル「何!? 何!?」 オリフィエル「巻き込まれるぞ!」 ラファエル「何だあのエネルギー!? 強大すぎるぞ…!? サマエルの力か!?」 オリフィエル「違う! ミカエルが本気だ!」 スライサー「よく分からんが…離れればいいんだな!?」 スライサーは飛空挺を一気に旋回させ、その場から離れ始めた。 しかし、そのエネルギーは…! サマエル「ぐっ!? この力…まさか貴様! 空間の狭間の膨大なエネルギーを利用したというのか!?」 ミカエル「くっ…!」 サマエル「く…くくく… 早く止める事だ…貴様の仲間もまとめて葬られる事になるぞ…?」 ミカエル「ぐう…!」 サマエル「…!? 貴様、制御出来ていないとでも言うのか!!」 制御出来ていないそのエネルギーは、次第に周囲を巻き込み始めた!! ラファエル「あいつ、何をやっているんだ!!」 アナエル「どうなってるの!?」 オリフィエル「あれは…空間の狭間のエネルギーをそのまま取り込み、更にそのまま放っている! それも膨大な量のエネルギーを…! あんなの制御出来るわけが無い! 自身を巻き込んで吹き飛ぶぞ!? それに俺達も…!!」 ミカエル「く…そ…っ…!! こんな…はずじゃ…!!」 仲間を巻き込んでしまう…! 守るはずの仲間を自分の手で消し去ってしまう…! それじゃあ… ミカエル「意味が…無いだろうが…!!」 サマエル「こいつ…! ふん…だが、これならば逃げきることは可能…! エネルギーの方向が見当違いだ…… 逃げさせてもらうぞ…?」 だが、サマエルの足はそこから動いていなかった。 スライサー「くっ、エネルギーがこっちに向いているのか!? とてもじゃないが、逃げ切れない!!」 ラファエル「こうなれば、あいつを止めるしかない!」 ラファエルは裂け目を正面とミカエルの後ろに作りだした!! オリフィエル「止められる…のか!?」 ラファエル「無理矢理にでも止めるしかないだろう!! このままだと、俺達も、この周囲の地も、 それにあいつ自身までも死んでしまうんだろう!?」 オリフィエル「た、確かにそうだ…けど…」 アナエル「じゃあ…仲間を助けないと…」 オリフィエル「…まあ確かに賭けをするしかない状況だけど…どうやって止めるっていうんだ!?」 ラファエル「何でもいい! とにかく止める!」 ラファエルは裂け目に入った! 続いてアナエルも入って行ってしまった!! オリフィエル「とにかくって! ちょっと待てって…!!」 スライサー「…その裂け目、巨大な物は作れないのか!?」 オリフィエル「…? どれくらいだよ!!」 スライサー「この飛空挺が入るぐらい、だ!!」 オリフィエル「そりゃ無理だぜ!」 スライサー「ちっ…さすがに貰ったものを速攻で潰すわけにはいかない… 妥協するか… 今から飛空挺を一気に落とす!」 オリフィエル「は!?」 スライサー「下を見ろ!」 その下には、巨大な湖があった。 スライサー「あそこに落とす! 多分壊れないだろう…!! そして俺達はその裂け目に入り、ミカエルの所に行く!」 オリフィエル「何て無茶苦茶な…!」 スライサー「今から落とす! 俺がそれから入れる位置に裂け目を作ってくれ…頼んだぞ!」 オリフィエル「責任重大だなおい!」 そしてスライサーは、飛空挺の浮力を消し、落とそうとした! スライサー「…」 オリフィエル「あーもう、これでいいだろ!?」 前が下に、後方が上に変化する!! そして、オリフィエルは「下」に裂け目を作った! ミカエル「く…!」 ラファエル「ミカエル!!」 ミカエル「!?」 ラファエル「助けに来た!」 アナエル「大丈夫!?」 ミカエル「馬鹿…か…! お前ら…裂け目を使って…逃げればいい所を……!!」 ラファエル「仲間だろう!?」 ミカエル「…!?」 ラファエル「遥か以前からの仲間だ…死なせる訳にはいかない! 自己犠牲なんてやめろ! 共に闘い、そして生き残る! そして…お前が死ぬなら俺も死んでやる!!」 ミカエル「ラファ…エル…」 アナエル「でもそれは今じゃないよね…今は止めなきゃ!」 オリフィエル「…っと、成功したか…?」 スライサー「上出来だ…」 ラファエル「スライサー…? 飛空挺はどうした!?」 スライサー「湖に落とした! サルベージすれば大丈夫なはずだ…耐水性があれば、な」 オリフィエル「無事に湖に落ちてるかも心配だけどな…」 ラファエル「そ、そうか…だけどお前は下がっていろ! 天使の力に、一般の人間じゃ何も出来ない…」 スライサー「…いや、それは無い。」 ラファエル「何!?」 スライサー「現に…俺は…止める方法を思いついた…」 ラファエル「思いついた…!?」 スライサー「簡単だ…手を抜けばいい」 オリフィエル「裂け目を閉じるか、ミカエルの手を引き抜いてしまえばいいって事か… って、簡単に言うし単純な事だけどあのエネルギーじゃそう簡単には…!!」 スライサー「ああ…確かに、エネルギーは周囲にかなりの量だ。 今も、気を抜くと吹き飛ばされてしまうだろう…だが。 それでも、後方はそのエネルギーは少ない。 ここからならば無理矢理あいつを吹き飛ばして手を裂け目から抜かせることが出来るだろう…」 ラファエル「…それしか方法は無いか…我慢しろ、ミカエル!」 ミカエル「……」 アナエル「でも、吹き飛ばすのにも半端なエネルギーじゃ足りないと思うけど…!?」 オリフィエル「そこ…どうすりゃいいんだ…?」 スライサー「だから…な。」 スライサーは、一つの方向を指差した。 アナエル「え…?」 そこにはサマエルがいた。 ラファエル「…お前、逃げるチャンスだろう? 何故逃げていない?」 サマエル「くくく…簡単な理由だ…よく考えればな… ここで死なれちゃ奴の魂を狩りとれないじゃないか…くくく…」 オリフィエル「…まさかあいつを利用しよう、と?」 スライサー「…奴は強い力を持っているはずだろう…? 死神とまで言われるほどだからな…」 ラファエル「なるほど、な。 そうと決まれば、早速協力してもらおうか。」 オリフィエル「お、おい…大丈夫なのか?」 ラファエル「この状況じゃ、どちらにしろ奴の目的は果たせない。 なら、協力する。 敵同士が時に組むのは必然だ」 オリフィエル「よく分からん!!」 ミカエル「ぐ…!」 アナエル「…早くした方が良さそうだけど…!?」 サマエル「くくく…癪だが仕方ない…全ての力を合わせる必要があるな…」 ラファエル「癪…ねぇ。俺は違うがな」 サマエル「何だと…?」 ラファエル「まあいい、行くぞ! アナエル、オリフィエル…天使の力を解き放て!!」 アナエル「うん!」 オリフィエル「あ、ああ…」 スライサー「…俺は何も出来ないか…提案しただけか…肝心な時に…」 四人の天使が、力を集中させ、ミカエルに対して放った!! ミカエル「う…!!」 ラファエル「行けるか!?」 オリフィエル「お、おい…! 俺本気なんだけど…!?」 アナエル「わたしも…! まだ…駄目!?」 ラファエル「くっ!? 足りないのか!?」 サマエル「くくく…」 オリフィエル「こいつも手を抜いてる感じはしないけど…少し笑ってるけど!」 ラファエル「俺だって本気だ…! 何で吹っ飛ばないんだよ!!」 サマエル「くくく…空間の力が奴を吸いこもうとでもしているんじゃないのか…?」 ラファエル「!?」 オリフィエル「マジかよ…」 サマエル「それに、今、四人分の天使の力により抑え込んでいる…どういう事か分かるか? くくく…今力を放つのを止めたら反動で力がこちらに吹き飛んでくる… そうなれば…俺様も、貴様等も、即死だ…」 オリフィエル「こりゃ駄目だ…一緒に死ぬ事になるか…」 アナエル「…兄さん…みんな…」 ラファエル「…くそっ」 スライサー「(俺は何も出来ないのか…? このまま、あいつらが死ぬのを見ているだけか…? 何のために俺は来たんだ…?)」 目の前の状況を見つつ、スライサーは考えた。 彼は、目の前の状況とは裏腹に極めて冷静に考えた。 スライサー「(…俺は奴等とは違う。ソル達とも違う。 特別な力は俺には無いはずだ。 だから、駄目なのか? 俺には何も無いのか?)」 彼は、少し悔しかったのかもしれない。 スライサー「(俺が何を考えようと、何も出来ない。 それどころか俺の無謀な提案によりあいつらは危機に陥っている…? 俺が奴等を死なせてしまうのか… そうしたら…どうすればいいんだ? 俺は…何も…出来ないのか?)」 ????「それは違う…」 スライサー「!?」 後ろには、一人の少女が浮いていた。 先程、ミカエルに意味深な言葉を投げかけたあの少女だった。 スライサー「お前は…俺の心を読んだとでも?」 ????「…今…あなたしか彼等を救える人はいない…」 スライサー「どうやって、やれと言うんだ…?」 ????「簡単な事… 強く願って。」 スライサー「…何を、だ? それっぽい力は俺には無いが…?」 ????「…ある」 スライサー「…何?」 ????「あなたには隠された力がある…いまなら、少しだけ解放できるはず… 絆で結ばれた者達には同じ力が…」 スライサー「…何を言ってるか分からないが、あるっていうならそれを信じてみようか…」 そう言うと、スライサーは集中した。 スライサー「(力があるなら…今こそ…その時だ…!)」 その瞬間、光が四人の天使の力に合わさった。 ラファエル「!?」 アナエル「え、何!?」 スライサー「!」 その瞬間、ミカエルは吹き飛び、空間の裂け目が閉じた…!! ミカエル「うっ…」 ラファエル「!? 何…だったんだ…?」 スライサー「あいつら…まだ余力が残っていたのか…冷や冷やさせやがって」 ????「…ふふ」 すると、少女は消えてしまった。 スライサー「…? まあいい、あの女の言ってる事は外れたわけだ…」 その後… サマエル「…くくく。」 サマエルは縄で縛られていた。 ラファエル「明らかに余裕の表情が消えたな」 サマエル「…」 ラファエル「さて、鎌を砕くか…多分これで」 スライサー「…鎌を砕いたら魂が元に戻るのか?」 ラファエル「おそらくな。簡単な事だ」 スライサー「本当に簡単だな…ところで、そもそもこいつは何故魂を狩っていた?」 サマエル「くくく…それは人々の悲鳴を聞くのが…」 その時、かなりふらつきながらミカエルが立ち上がった。 ミカエル「いてて…こいつは、考えが単純すぎてな… 将来、力が必要になると考え、他の存在の魂で自身を強化しようとしたのさ。 意味無かったみたいだがな…」 サマエル「くくく…それは違…」 ミカエル「違わない…」 スライサー「何…?」 ラファエル「…そうなのか?」 ミカエル「…将来、やっぱり何かあるんじゃないかと考えたわけさ…こいつは…」 アナエル「だけど、やった事は…」 オリフィエル「でも、魂が戻って、鎌も砕けてもう狩れなくなるなら別に許しても良さそうだよな…もう出来ないなら。 魂が戻らないなら…吹っ飛ばせばいいだろ」 ラファエル「…それもそうか」 センクレイス城 スライサー「…と言う事があったわけだ。 そして今ミカエルは猛省中だ」 ボルト「そ、そうなのか…色々大変だったんだな。」 スライサー「さて、次は飛空挺のサルベージだ…」 ボルト「あー…落としたって言ったな…」 ラファエル「…まあ、これで七大天使という括りになった訳だな」 ガブリエル「乗り遅れたんだけど…さっき…」 ザハリエル「目立とうとしたのに何でこうなっ」 オリフィエル「まあいいだろ。これからは元死神もすごい勢いで働くんだろうし」 サマエル「くくく…くくくくく……」 アナエル「怖いよ…この人…」 ミカエル「(猛省中)」 ボルト「ところでお前って…」 スライサー「ん?」 ボルト「…天使に興味でもあるのか?」 スライサー「あるな…興味の対象としては優秀だな。 だが…どうも不可解な事があってな…」 ボルト「何か感じる…ってか?」 スライサー「その「気」は強くなっている…」 ラファエル「ん…?」 ラファエルがふと、スライサーを見た。 スライサー「まあ、気のせいだろうな…」 ボルト「疲れてる、って事は無いのか?」 エストレア「ひゃっほう! 出番をさりげなく確保!」 ボルト「って、脈絡も無くいきなり出てきて邪魔するな!」 スライサー「…疲れ、か…」 ラファエル「あいつから何かを感じる… あいつは…」 スライサー「ん…? どうした?」 ラファエル「…スライサー。 お前、どうするつもりだ?」 スライサー「どうする…って、どういう事だ?」 ラファエル「…出来れば、協力してほしい事が山ほどある。」 スライサー「…協力ならしてもいいが、あまり期待はしない方がいい」 ボルト「…七人もの天使と一緒にいてもあまり違和感なく馴染むのか、あいつは…」 スライサー「まあ…気にかかる事があるなら…一緒にいればいつか分かるだろう…」 オリフィエル「スライサー…大事件に巻き込まれたらどうするんだよ…」 スライサー「…大丈夫だ、おそらくな…おそらく、だが…」 この時はまだ気づいていなかった… スライサーに課された一つの運命を… それを知っているのはただ、一人……