「俺の名はスライサー。
 あの後元の世界に一旦戻ったんだがその時剣をスピアに渡してもらった。
 どうやらふとあの洞窟に入ったら見つけたらしいな。
 だがまともに使えない事が分かった以上うかつに持っていられない。
 俺はその剣を預けたままにしてもう一度こっちの世界へ来た。

 あの剣、神からの貰い物(GF33話参照)だから無くしたらどうなるか分かったものじゃない…」

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スライサーがポケモンの世界に来てから早い物でもう一か月が経とうとしていた。

ようやく彼も探検隊の仕事に慣れ、ポケモンとしても慣れ、

大分マシになってきた。


ただ、彼は半分以上は元々の世界の方にいるので、そこまで多くをこなしているわけではない。

セレスタとゼクティスはその辺りは考慮して、依頼が増えすぎないようにしていた。

もしくは、出来る限り二体でこなしていた。


そんなある日のことである。



スライサー「で、今日は遠くまで来た訳だ、が。
      ここはどんな所か教えてほしい」


セレスタ「炎の山…暑い所です。」

スライサー「それだけなのか…
      …火山…
      マグマが溢れていたりしないだろうな…?」



ところで、突然だが補足すると。

スライサー達のいる辺りの場所ではどちらかと言うと…というより、

圧倒的に「探検隊」より「救助隊」の方が多い。


探検隊は別の大陸の方が多いらしい。


ただ、別に数少ない訳でもなく、探検隊と救助隊はその活動内容が非常に似通っているため、

別にどちらでも特に問題は無い。


ただ、救助隊の方が救助に偏っている所はある。

探検隊の方が未知の場所への探検が多い。


ただ、彼等はそういうのを探すにはまだ経験不足である。



ゼクティス「炎タイプのくせにマグマを恐れていたら、やってられねぇぜ?」

スライサー「(どういう神経をしていやがる…
       それともこっちがおかしいと言うのか…?)」




そうして彼等は炎の山を登る。



今回、ここで遭難したと言う者がいるらしく、それを探すのが目的である。

そして、助ける事。



スライサー「何処も彼処もマグマだらけ…過酷極まりないな。
      慎重に行くとしよう…」



だがゼクティスが躊躇いなくマグマ地帯に足を踏み入れる。



スライサー「(!?)」




ゼクティス「ほら、お前もこっちに来いよ」



スライサー「…お前、おかしいだろう」


ゼクティス「周りを見ろよ」




スライサーは周りを見渡した。


炎タイプのポケモンがマグマの上を移動している。たくさん。





スライサー「(おかしいのは…俺の方だったか…)
      悪いが熱いのは嫌いなんだ…寒いのも嫌いだが」



セレスタ「なら、何故炎タイプなんですか?」

スライサー「(分かる訳が無いだろう…気づいたらこうなってたんだから)」



ゼクティス「…人間の常識にでも囚われてんのか?」


スライサー「(人間の、じゃなくてほとんどの生物の常識だろう?)」




ゼクティス「いいか? ポケモンというのはお前のような、「人間だった者」の想像を遥かに超越する。
      世の中には、時や空間を司るポケモンもいたりする。
      そういうもんなんだぜ?」


スライサー「…そういえば空間を操ったりするなんて普通有り得ない事だったな、
      すっかり忘れていた」


スピア達のせいで大して驚きが無い…というよりそれが普通だと思い込んでいたスライサー。




セレスタ「?」


スライサー「…いや、何でもない。」



ゼクティス「お前は伝説のポケモンの知り合いか何かなのか?」

スライサー「…いや、単に…
      空間を操る事が珍しい事とは思えなくなっていた。
      知り合いにたくさんいるから、そう言う奴が…」



ゼクティス「(…こいつ、変な所が常識離れしてるな)」





そうして彼等は山を登っていく…



スライサー「…思ったんだが何でこんな山に階段があるんだよ」

セレスタ「突っ込みを入れたら負けですよ」


スライサー「(…この謎、永遠に解明出来そうに無いな。
       そもそもその階段が消えたり構造が毎回変わったり…

       ただ、そういう場所はあっちの世界にもあった)」



俗に、不思議のダンジョン、或いは不思議なダンジョンと呼ぶ。





そうして彼等は登って、登って、登って…


ふと、誰かを見つけた。




???「お腹減ったよぉ…誰か助けてくれないかなぁ…」




スライサー「ん…どうやら、遭難したと言うのはあいつっぽいな」


セレスタ「そうみたいですね。行きましょう!」




???「…? 誰?」


スライサー「遭難した奴を助けに来た一行だ」


ゼクティス「(よく分からん言い方だな)」




???「え、助けに来てくれたの? あたしずっと遭難してるんだけど」


ゼクティス「こいつみたいだな」

スライサー「じゃあ、さっさと戻るとするか…」



セレステラ本部(更地)


建物は無い。雨が降ると濡れたまま寝る事になる。

後、本部も何も支部がある訳無い。基地が無いからそう言ってるだけである。



スライサー「(更地)って…」

セレスタ「何を言っているんですか?」

スライサー「…何でもない。
      で、お前は何故あんな所にいた?」



先程助けた相手に問うスライサー。


???「うん。ちょっと、色々探してて。
    異世界へ行きたいんだけど、ね。」


スライサー「異世界? あんな所にそんなゲートは無いぞ。」


???「え、知ってるの?」

スライサー「俺は異世界人だからな。現ポケモン、通常は人間」


???「え!? 何所!? 何所!?」



スライサー「…その前に、何故行きたいんだ?」


???「あ、うん。
    ちょっとこっちに飛ばされちゃって。
    「永遠の世界」と言う所にいたんだけどちょっと策略にはめられて。
    それで数千年こっちの世界にいるんだけど。」


セレスタ「数千年!?」


ゼクティス「おいおい! 不老不死か!?」


???「うん。」



スライサー「不老不死…? もしかして天使関連か?」




セレスタ「天使?」

スライサー「俺も「永遠の世界」から来たのさ。
      そっちには「天使」っていう不老不死の奴等がいてな。」


スピア達のせいで珍しくないと。スライサーはやはり常識離れした価値観でも持っているのだろう。




???「え、天使を知ってる!?」


スライサー「ビンゴか。
      数千年前…聞いた話によると…」





永遠の世界における数千年前とは


三人の天使が暴れまわった時期である。

スピア「(突然だが出番ゲット+宣伝の時間だぜ。詳しくはGF参照!)」

出て来るなよお前。





スライサー「(カメラ目線とでも言うのかあれは。
       突然現れて明後日の方向…じゃなくて何所か変な方向を見て喋ってそして早々に引き揚げるとは…
      まだ出番が欲しいのかあいつは。」



セレスタ「…今の誰ですか?」


スライサー「…アレは気にしない方がいい。
      とにかく、あっちの世界じゃ天使なんて珍しくは…いや、珍しいか」



???「で、あたしは妹を探しにあっちの世界に行きたいんだけど…
    ちょっと…あたしがいなくなって暴れてないか心配で。」


スライサー「それで暴れまわる迷惑な奴がいるのか。」



???「うん。心配で、っていうか多分暴れただろうけど。
    もしかしたら死んだ事にされてるかも。突然消えたし。」


スライサー「死んだ事に、って…おいおい。」




セレスタ「(話についていけません。)」




スライサー「(天使関連だったらエアー辺りにでも聞けばすぐそいつが誰か分かるだろう…)」


???「え、エアーを知ってるの?」



スライサー「(…こいつ、思考を読めるのか?)」





ゼクティス「誰だ…? そいつ」

セレスタ「多分…わたし達には分かりません」



スライサー「成程…」




ゼクティス「おーい、俺達寝るぜ」


スライサー「ああ、先に寝てろ。」








朝


スライサー「…驚いたな。本当に、死んだと思われているぞ、お前…」


???「やっぱり?」

スライサー「そしてお前の探している奴は随分暴れまわってくれてたらしいしな。」


???「あー…そう…
    やっぱりそうなるんだ…今はどう?」

スライサー「今は暴れていない」


???「そう。よかった…」





ゼクティス「まだ話してたのか!?」


起きて早々驚くゼクティス。



スライサー「ああ。」




???「じゃあ、あたし行くから。教えてくれてありがとう!」

スライサー「どういたしまして。」


???「あ、そうだ!
    妹にあったらまたこっちの世界に戻ってこようと思ってるんだけど…
    その時、お礼させてもらっていい?」

スライサー「どっちでも。」





彼女は行ってしまった。



セレスタ「…知り合いの知り合いだったんですか?」


スライサー「そうだな。そうだった。
      正しくは知り合いの姉、だが。
      全く、本当に驚いたぜ。
      こっちの世界に来た大きな意味も少しはあったようだな」


ゼクティス「大きな意味が少し、ってどういう意味だよ」


スライサー「別に…」








…さて。


そろそろ彼等は更に遠出もしてみようと思っている頃だった。


探検隊と言うからには未知の場所を探検してみたい、そう思ったのである。