第6話 彼の思い、彼女の思い ディル「立ちふさがる障害を排除し、突き進む・・・ そう、リジェクト・・・」 ソフィーの言っていた事をちょっと表現変えているだけで説明したディル。 ファング「す、すごい・・・そこまで深い意味が・・・ やっぱ・・・かっこいい・・・」 ディル「(これ俺が考えたんじゃないんだがな・・・)」 思えばあの時ディルはかなり軽いノリになっていた。 ディル「(全く・・・羽目は外すものじゃない・・・ 周りの奴等に多重人格者だと誤解されるかもしれない・・・)」 周りからすりゃそう見える。ノリが軽い時と今ではあまりに違う。 ファング「ど、どうしたんだ?」 ディル「何でもない。 (・・・思い返せば大失敗だらけだったな、あの日は・・・)」 冷静すぎる分析をするディル。 ディル「ぶつぶつぶつぶつぶつぶつ・・・」 ファング「・・・?」 トレジャータウン ディル「ぶつぶつぶつぶつ・・・」 ファング「・・・?」 ソフィー「(二重人格なのかな・・・この前と違いすぎる・・・)」 ディル「はっ・・・ 声に出てたか・・・」 ソフィー「・・・」 ディル「まあいい。 とにかく、今日も依頼をこなす事になったから、準備を整える必要がある・・・」 彼等は、お尋ね者のスリープを捕まえに行く事になった。 ディルが適当に選んだだけだったが。 ソフィー「それで情報収集? 場所とか書いてなかったっけ・・・」 ディル「・・・そうなのか?」 ソフィー「え?見てなかったの? 見たと思ったのに・・・」 ファング「ミスは誰にでも・・・」 ディル「くっ・・・罠にはまった!」 ソフィー「(何言ってるんだろ・・・)」 ディル「だがここで戻って見直すのは格好悪い気がするから情報収集は行う!」 ソフィー「強情だね・・・」 しばらく経過 ディル「またトゲトゲ山か・・・連続で同じ所に行くのは好きじゃない・・・」 ソフィー「しょうがないよ。」 ファング「聞いた話によると、一匹のルリリが誘拐されたんじゃないか、と・・・ 珍しいなあ、お尋ね者って言っても普段なら泥棒とかばかりなのに。」 ディル「つまり悪質犯か。 叩き潰してやるか・・・」 その頃・・・プクリンのギルド。 ?????「この依頼、どこの探検隊が受けているんですか?」 ペラップ「それは、」 ????「僕達にも行かせてくれませんか?」 ペラップ「い、いやあ、それはちょっと・・・」 ?????「お願いです!」 トゲトゲ山 ディル「登山するのが嫌なんだがな・・・」 ソフィー「ただひたすら登ってるから疲れるんだよ。 ここは、何か楽しい話でもしながら行こうよ。」 ファング「ふとんがふっとんだ」 ディル「お前は黙れ。しばらく俺の目の前に姿を見せるな。 喋るな。動くな。息を吸うな。心臓を動かすな。」 ファング「酷!」 ソフィー「(もしかして三重人格・・・?)」 あらかじめ言っておくと、彼は多重人格でも何でもない。 単にほとんど全ての性格をカバーしているだけである。 ディル「(適当な解説しやがって・・・) ところで、お前らに家族っているか?」 彼等は、ちょっとひらけている場所で一休みする事にした。 高い所まで来たからか、ちょっと寒かった。 ファング「田舎に。」 ディル「田舎って何処だよ!」 ソフィー「・・・家族は・・・もういないよ」 ディル「・・・(まずい・・・)」 ソフィー「友達とも、生き別れちゃった」 ソフィーは、体を温めるために、薪を集めていた。 ディル「(・・・気まずくしてしまった、完全に)」 ファング「見つかるといいな!」 ディル「ファング! 空気を読め!! せめてもう少し話を聞いてから言え!」 ソフィー「・・・興味本位で、探検なんてしてたから、わたしだけ・・・」 ディル「・・・?」 ソフィー「3人の友達と一緒に、住んでいる所の近くにあった洞窟を探検したんだ。 そこには危険な生き物もいたけど、みんなで先に進んだ」 ディル「危険な生き物、ねぇ・・・」 ソフィー「その奥には、変な壁画みたいなのと、これが・・・」 ソフィーが取り出したのは、あの「いせきのかけら」だった。 ソフィー「・・・それを手に取ったら、声が聞こえた。」 「希望へと託さねばならない・・・頼もう」 ディル「・・・そして気付いたら遠くに飛ばされたわけか。 で、友達と生き別れた・・・だが、俺のような記憶喪失じゃないなら、 探すすべはたくさんある。」 ソフィー「・・・ディル・・・」 ディル「俺だって、友達とか、仲間とかいたはずなのに思い出せない。 全く・・・いや、覚えてる事象もあるんだがな・・・」 ソフィー「・・・どんな事?」 ディル「何度も戦いに巻き込まれ、死闘を繰り広げた・・・ そんな記憶だけ思い出せる」 ファング「すげぇ!」 ディル「だから黙れって。 ・・・どうして戦ってたのか分からない、 だけど必死に戦っていた。 謎の記憶だ。分かる事も、何も無い・・・」 ソフィー「・・・思い出せると・・・いいね。」 ・・・・・・ ディル「・・・ソフィー。 火を熾すのは俺に任せて、お前は休め。 お前の方が疲れていそうだからな・・・」 ソフィー「・・・うん。」 その後、ディルは火を熾すのに悪戦苦闘していた。 ファング「秒速1000回転ぐらいさせれば火が・・・」 ディル「・・・出来る訳が無い。」 ようやく火がついた。 その頃には夕方だった。 ディル「・・・今日はここに野宿しよう。 夜は見通しが悪い。足を踏み外して落ちたりしたら冗談じゃすまないからな・・・」 ソフィー「一休みのはずが野宿になるなんて・・・」 ディル「・・・それ以前に、野宿と言う概念がむしろ当然かもしれないがな。」 確かに。 ただ、彼らが明日、頂上に到達する頃には・・・