第70話 真実への鍵 虹色の宝石 「わずか数年前、スノークリアで起きた大虐殺。 現女王「クリアハート」の先代「ブラックハート」の起こした、史上空前の大惨事。」 「う…フリーズ…そんな事知ってるのか… って、そんな最近の事だと思うか?」 クラウソナスは、どこか動揺している。関係しているのが丸分りである。 「事件自体は有名な話…今ではあまり語られていないだけだ。 本当に迷惑な話だ…罪も無い連中が大量に殺された… お前が知ってるかは知らんが… 当時、ブラックハートは娘のクリアハートが自分より多くの支持を受けている事に嫉妬し、 ただそれだけの事で、その娘の支持をしている連中を皆殺しにしようとした。 全く…最悪だな」 「…本当に最悪な奴だ。奴のせいで…!!」 「…やはりボロを出したか」 「って…口に出てたか!?」 焦るクラウソナス。ただ、先程から丸分りっぽかったが。 「……それはともかく。 当初、クリアハートには護衛がいたらしい。 計十五人だったって話だ。一度にそれだけ大人数で護衛するってのもどうだか… それにその護衛の中には年もそこまでいかない子どもが何人かいたらしいしな。」 「……十五人の護衛」 「正気じゃない。大虐殺の最中に…子どもを紛れ込ませるか。まあ、そいつも子どものはずだがな。」 確かに、危険極まりない。何を思ってそんな子どもを抜擢したのか。 …で、問題は…その内一人がむごい殺され方をしたらしい。」 「…ラ」 「…? まあいい、何しろ死んだ後にブラックハートが原形を留めないほどにやりやがったらしいしな。 全く…女の嫉妬とは恐ろしい…自分の娘やその仲間をそこまで残酷な殺し方を…」 「そうだ…奴は死んで当然だった…! 「俺達の」仲間をぶっ殺しやがって… だが、「俺達」十三の神剣の前にはあんな糞女無力だったがな! ざまあみろってんだ!!」 「…クラウソナス。 「俺達の」仲間… 「俺達」十三神剣の前には無力…」 「げっ…しまった…ついヒートアップしてしまったぜ… 知られたくない事実がボロボロ溢れる予感…」 フリーズは的確に突いてきた。 ここから語りたくも無いような事をどんどん暴かれてしまう…と彼は思ったが… 「…聞かないでおこうか。 そう言う事は…トラウマか何かになっていそうだな」 「え?」 フリーズは意外にもそこから先の追及はしなかった。 クラウソナスは目を丸める。まさか冷酷フリーズの口からそんな言葉が出てくるとは。 「ありえないぜ」 「折られたいか、貴様は。 …とにかく、どっちみちいずれ分かりそうな事…今無理に聞き出す必要は無いな。 この本を解読すれば更なる事実が分かりそうだ…」 …さて。センクレイス城の一室で、ガブリエルとラファエルが探した成果を報告しあっていた。 「駄目だ。全く見つかりそうにない」 「…やっぱり駄目?」 「ああ。あいつがそんなに遠くに行くわけがないと思ったが… そうでもないらしいな」 「そう言えば…わたしはこんなのを見つけたけれど?」 ガブリエルは虹色に輝く宝石を取り出した。 光の反射とかそういうものではなく、本当に色が変わっていく。 「あの鉱山にあったのか?」 「そう。鉱山の最深部に落ちていたからとりあえず拾って来たけれど… そう言えば…」 ガブリエルは、鉱山の最深部でもう一つ気にかかる物を見つけていた。 「これを見て」 そう言うと彼女は空間の裂け目を開いた。 その先に見えるのは鉱山の最深部だった。 そこは、多くの植物が生い茂っている場所… 「…これが鉱山の最深部か? 何で植物がこんなに生えているんだ?」 「それと…あれ」 ガブリエルが指した先には、穴があった。 非常に細い穴。まるで何かが刺さっていたような…そんな物。 「…この穴と、環境を無視した植物… これを合わせると、もしかしたらここにアレがあったのかも…」 「何かが刺さっていたような痕跡…それに常識を超越して生い茂る植物達。 …俗に言うクリスタルでもあったのか?」 クリスタル。 不思議な力を秘めていると言われる水晶… 「あんなに小さな穴にそんな物が埋まっていると思う?」 「それもそうだ。 じゃあ…何だ?」 「わたしの予想では…きっとあそこに剣が刺さっていた。 それも…神剣か、もしくはそれに準ずる物…そうでなければあの環境は作れないから。」 「神剣か。 …そういえばあいつ、「グラム」とか言ってたな。何か関係あるのか?」 「グラム? それ…以前聞いたけれど、確か「深緑剣グラム」じゃない?」 「深緑剣?」 「以前ミカエルが神剣について書いてある本を見せてもらったって言ってて… ちょっと興味があったから聞いたんだけど、確かにその中にグラムがあったような…」 「辻褄が合うな。 深緑剣と言う事は、まさに自然を司る剣と言う事。 そしてあの穴と植物…間違いないな」 「…問題は、何故」 「…?」 「何故、オリフィエルがそこへ向かったか。 グラム、と口にしていたなら、それは…偶然見つけたのではなく、 そう分かって進んだと言う事に…でも何でわざわざ…?」 「やっぱりそうなのか…」 不意にラファエルとガブリエルが後ろを見ると、ミカエルがいた。 「ミカエル!?」 「見つからなかった?」 「残念ながらな。」 ミカエルはため息を吐きつつ、座った。 「あいつが突然行動を起こすなんて今まで無かったからな。 全く分かんねぇや。 …まあ、その話が鍵だろうけどな。 あいつは以前も神剣について何か知っているような事言ってたからな…」 ふと、ミカエルは思った。 ティルヴィングの事である。 出会った時、既にティルヴィングを彼は持っていた。 「重大な謎だ。 俺達も知らない何かがある」 「…この宝石も何か関係が?」 「さあ、な。 でも…まあ持ってた方がいいと思うぜ。っと、そう言えば… この城に保管していた…というか住み着いてた三本の神剣も失踪したらしい」 「神剣が失踪…?」 「…いよいよ怪しくなってきたな。いよいよって言うほど怪しくなかった訳じゃないけどな。 オリフィエルと神剣にどんな繋がりがあるのか…探ってみる必要がある。」