第72話 禁忌の術と闇の力


スノークリア城で色々起こっている所に更なる火種を投げ込みかねない者が、今ここにいた。


その人物は城の近くの森の中を歩いている。


その名は…スピード。かつて世界を危機に陥れた天空の天使の一人。

今は無害。


「…無害?」


かつては有害だったかもしれない。


彼女の姉…ミストは以前殺された。


ミストを殺したのはただの盗賊団だった。



とはいえ、後で分かった事によると、その盗賊団は、以前の事件の黒幕…


グランディア、及びその体を利用していたサタンの部下がそれらしく見せていたらしく、

スピードを利用するためにわざわざそんな痕跡を残させたのだったらしい。

そしてその思惑通り、スピードは人間を恨み、皆殺しにしようとまで考えるようになっていた。


しかし、それはあるきっかけで止まったのだが。




彼女は今、かつて被害を与えてしまった全国各地を回っていた。


少しでも罪を償うべく、各地で色々行ってきたらしい。


その旅はほぼ終わったらしいが、せっかくなのでこのまま他の場所も回ろうとしていたようである。


「うう…寒いな。
 防寒着を着こんでくればよかったよ」


一先ず彼女は現在色々起こりそうなスノークリア城に向かっていた。





そのまま、スノークリア城に辿り着く。


「着いた…ああ、寒い…
 …でも城に来てもなあ。街の方で宿をとらないと…ん?」



ふと横を見ると飛空挺が置いてある。そしてその近くに一つの人影。



「…ん? お前は…」


それはスライサーだった。







レッドオーシャン内の一室にて。


「…スピード、だったな。
 お前は、人の罪って消えると思うか…?」



「…俺のやった事を言ってるのか?」

「違うな。お前はもう大丈夫だと分かっている。少なくとも俺は、な。
 …それとは違う意味だ。」

「…償えば、消えると思う」


「…そうか。」




スライサーは、スピードに温かいスープを出した。


「…ありがとう」

「礼を言われるほどの事じゃない。
 …というか、お前…凍死しそうだったからな。見た感じ」


「…そんなに?」

「ああ」



自身では気付かなかったのだろうか。


スピードは、出されたスープをゆっくり飲み、息をついた。



「…ところで、スライサーは何でここに?」


「天使達に引っぱり回されただけさ。」




と、その時。スライサーが何かを思い出したかのように。


「…そうだ、スピード。お前の姉って、何て名前だった…?」


「姉さんの名前? ミスト、だけど…」




スライサーは予想通りといった顔をした。

「成程、な。」


「…?」


「いや、何でもない。
 さて…様子でも見に行くか…」


「折角だしついて行っていいか?」

「ああ…」





舞台はスノークリア城に戻り…


「…三人がかりならどうだ?」

「しつこすぎる…」


ミカエルはオリフィエルにもう一度力づくを試していた。



「それでも俺はそれについて知りたい。
 スライサーじゃないが、興味深い」


「…でも言わない」

「…作戦開始!」



「危ない、上から何か降ってくる!」


「え!?」



「今だ!」



上を向いたオリフィエル。すると、ラファエルが突進して彼の懐から「ブレイド・コア」を奪い取った!


「んなっ!」


「よし、これで…」




その瞬間、ラファエルは闇を感じた。






「ッ!?」


「ど、どうした、ラファエル!?」

「…!
 これは…何だ!?」


「…ラファエル、大丈夫?」

ガブリエルが、ラファエルを心配する。



「…ああ、だけど…この宝石から闇の力を感じた…」






すると、オリフィエルの代わりに、誰かの声が聞こえた。


「…その宝石は、復讐のための力…」


「…ティルヴィング?」


「お、おい! 話さ…」

「あれを奪われたら君はほとんど無力だから…もう負け。あんなにあっさり…」

「……」



ティルヴィングは、ゆっくりと語り始めた。


「じゃあ、まずはわたし達、「神剣」の事から…その宝石の事はそれからでも大丈夫のはず。」


「ようやく事実が分かるのか」

ミカエルはそれがどんな話なのかじっくり聞こうとしている。…と、そこに。


「いい所で来れたようだな」



スライサーが到着した。


「スライサー。…と、お前、スピード!?」



スライサーと共に来た思わぬ人物に一同は驚く。



「…来たら悪いか?」


「…いや別に」




「…話していい?」


「早く」


今度こそ、ティルヴィングは語り始めた…




「まず、神剣は、わずか数年前に作られた物…それだけは先に言っておくけど」



「…数年前!?
 おい…遥か昔の書物に載ってるんだぞ、お前らは」


「それは簡単…時を超えたから。」

「はあ!?」



理解に時間がかかりそうな事をいきなり言ってくる。


つまり、現代で作られ、何者かによって過去へと飛んだ。


そして、今、神剣はその過去から…ある者は数年、ある者は数千万年の時を超え、再びこの時代へと戻ったらしい。



「時間軸の理解が難しい…」




「そして…その、神剣を作ったのは…そう、」


「…まさか?」



オリフィエルはそこで声を出す。

「…あー…俺が作ったんだよ、神剣って…」





少しの沈黙…



を、破ってミカエルは叫んだ。


「何だってえええええ!?」


「ミカエル…オーバーリアクション」


ガブリエルがミカエルを落ち着かせる。



「…ただ、関わってる事を知っていても…まさか作ったのが…」





「…そんなに意外か? いや、意外だろうけど」


「じゃあ聞くなよ」



そこから、更に衝撃的な事実をティルヴィングは言い放った。



「…もう一つ。
 神剣は、人間から作られた…」







長い沈黙。




そして、ミカエルは静かにその沈黙を破った。


「…何だと?」


「ミカエル、リアクションが足りない」

「いやガブリエル、そんなテンションじゃないし。

 …人間から神剣を作り出した…?
 つまり、お前らは元々は普通の人間だったと?」





「…そう。そして、わたし達を変えた力…それは、「禁忌の術」の一つ…」




「き、禁忌の術?」


ラファエルは、全くついていけなくなっていた。

それが何か全く分かっていないようだった。



それどころか、ミカエルすらそれが何か分かっていなかった。


「えっと…つまり、禁じられている、忌まわしい術…?
 な、何でそんな物をお前が!?」

とりあえず驚いてみたらしい。





一方、ガブリエルは事の重大さに気付いていた。


「…とにかく、それが事実?
 …これ以上深くは…明日にしない?」


「…?
 まあ、そうだな。…今、夜だったんだな、そう言えば」



ミカエルが気絶して、起きるまでかなり長くかかっていた。



「とりあえず飛空挺に戻って休むか…」





そして、ミカエルとラファエル…後、スライサーは飛空挺に戻ろうとした。


「…宿とらないと」

「ここで会ったんだから飛空挺で休んでけ」


「え、いいのか!」


スピードもついて行った。




しかし、ガブリエルだけはまだそこにいた。


「…オリフィエル。
 契約をしたとでも?」



「………」

「「禁忌の術」…それは、悪魔の秘術…そんな物を人間が使うには…
 悪魔と契約するしかない」


禁忌の術、とは…人々に知られているものではない。


悪魔…それも最上位の悪魔の使用する秘術である。


そして、それを…人間が行使するにはあまりに巨大な代償がある。




「…知っているのかよ、お前は」


「…オリフィエルのバックに、悪魔がついているとしたら…一大事だから。
 …悪魔の手先、というような訳じゃあないと思うけれど。

 それだったら、天使にもならないし、サタンに挑んだりもしない」



悪魔王サタン…かつて、天使達が挑んだ相手だが、それらだけでは勝てなかった相手でもある。



悪魔王、というだけあって…いくらなんでも悪魔と繋がっているならサタンと戦ったりしないはずである。



「…悪魔王?」


ところが、彼女はその考えの中にある、「ある可能性」に気付いた。





「…まさか!」