第74話 絶望の運命 閉ざされた未来

オリフィエルはミカエルの追及をかわしていた。


「だから聞きたいのはそんな事じゃなくて…」



それでもなお追及し続けるミカエルに対し、ガブリエルが近付いてきた。


彼女は、無言でミカエルをオリフィエルから遠ざけた。





「…悪いな、気を使わせて。
 今、最も不安なのはお前なんだろうけれど、な」

オリフィエルは、ガブリエルに申し訳なさそうに言う。


「ミカエルに、あんな事を話したら大変な事になるかもしれないから…
 悪魔と関わりがあるなんて…」


「…殺されるかもな」



オリフィエルは身を震わせる。


ミカエルはきっと悪魔に対して容赦はしないだろう。




その後、もう一度オリフィエルは口を開く。


「…でも…信じられないな」


ガブリエルも俯き、言葉を返す。

「…大事な話の途中で割り込んできて…
 一体何かと思えば、いきなりあんな事を…でも。」


「…スライサーが「見た事ある」って言ってたしな。話してみたら。
 もしかして…」





そして、その後もオリフィエルはミカエルの追及をかわし続けていたのだった。






彼等の去った後、スノークリア城では何かの準備をしていた。



「…クリアハート。昨日の出来事、信じる…?」


「…あれで…信じる以外の方法が…」

「…それは、そうだけど…ね」



クリアハートとティルヴィングが、暗い表情で話していた。








そして、センクレイス城…スライサーはその前に飛空挺を下ろした。




「スライサー…それに…」


「ボルト…話がある。
 ソル達も出来れば…ここにいれば」


「ああ…でも一体…?」








前日。


ガブリエルとオリフィエルが会話をしていた時のことだった。


「契約した悪魔は…かつての親友…!?
 そんな事が…」


「ああ…そして、仮に俺がその力に飲み込まれた場合…」

「その悪魔が復活する…?
 でも、親友が悪魔になって…その悪魔が悪魔王で…

 でも、数年ばかりでそんなに?」

「…過去に行ったらしくてさ。
 俺と近い年齢だったはずが数百万年以上とか何とか」


何かよく分からない話である。

過去に行ってそのまま現代まで来たと。


悪魔もほぼ無限の命を持つと言える。





「…時を超えた?
 一体どうやって…」


「さあ、な。でもまあ」


オリフィエルが笑顔で何かを言おうとしたその瞬間、



「……あなた達が空間の天使、ガブリエル…それに、オリフィエル…」


「「!?」」



その時、突如何者かの声がした。


ガブリエルとオリフィエルに聞こえた、謎の声。


「誰だ、何処から話しかけてきた…!?」


「…?
 オリフィエル、何を…?」


「え?
 今、誰かの声が聞こえただろ?」


「いや…」



近くにいたティルヴィングにはそれが聞こえなかったらしい。


「と言う事は…他の奴に聞こえてない!?

 幻聴かな…やばいな…」

ショックを受けている。


「…オリフィエル。私にも聞こえてる」

ガブリエルはオリフィエルに聞こえるようにはっきりと言った。



「…誰か知らないけれど、何の用…?」


「空気を読まず、話を邪魔して申し訳ないけれど…
 貴方達、空間の天使の前に…もう少しで、新たなる危機が迫る」


「な!?
 ど、どういう事だ!?
 この世界にとっての危機…! 悪魔王の一人…サタンは既に消し飛んでるはずだ!
 だから、この世界において新たな危機なんて…」



「サタンは復活する恐れがある…」



「え!?」


その声は、衝撃の事実を告げた。


ガブリエルとオリフィエルはそれに驚く。




しかし、オリフィエルはある点に思い当った。


「そうか…!」


「ど、どういう事!? オリフィエル!!」



「…さっきの話で俺がある悪魔と契約したのと同じ原理で、
 奴と契約するような馬鹿な奴が現れれば、また奴が復活するかもしれないって事か!」


「そう…サタンの肉体は滅んでいる…だけど、悪魔の魂は不滅。
 貴方達、天使のように…」



オリフィエルの契約したその悪魔も、現在、肉体を失った状態と言う事か。



だが…天使の魂も不滅?




「何か引っかかる言葉もあったが…」



「…とにかく、サタンが復活するかもしれないという事?」


しかし、その声は更なる事実を告げる。



「いいえ、サタンではない。
 下手をすればあのサタンよりも凶悪な存在」





「サタンより凶悪な存在!?」


ガブリエルは思わず小さく叫んでしまった。

あのサタンより凶悪な存在がいる?






サタンはかつてあらゆる時空の世界に対しての攻撃を行った。


その攻撃により、永遠の世界自体に甚大な被害を与えた。



「グランド・フォース」により、世界は回復したが。







ガブリエルは、絶望的な表情をした。


「そんな…!
 サタン相手ですら私達の力だけじゃ対処出来なかったのに!?

 それ以上の力を持つ相手なんて…!?」


「落ち着け、ガブリエル!
 この何者かの声を全部信じ切るなんていくらなんでも馬鹿げて…!」



しかし、その時オリフィエルに別の声が聞こえた。



『その声は真実…いずれ襲い来る敵…!』


「ッ!? お前…!」



「……!? 一体何の話!?」


ティルヴィングとクリアハートも慌てている。

突然絶望の表情を浮かべたガブリエルを見れば多少なり慌てるだろう。



彼女はこの世界を始まりから見てきた天使なのだから。






「オリフィエル…!? 何が…!」


ガブリエルはかすれた声でオリフィエルに問いかける。



『オリフィエル。早急に手を打たないと、悪夢が起こるかもしれない」


彼にのみ聞こえるもう一つの声は、彼に言葉を投げかける。



「…お前がそう言うなら、真実だって言うのか…!?

 …くそっ…ガブリエル! すぐにスライサーに行って飛空挺をセンクレイスまで飛ばす!
 ティルヴィング…悪いけどお前達はここで待っていてくれ。
 何か起きたらやばいから…」


「…分かった」



「急ぐぞ!」

「う、うん…」



その後、天使達を乗せた飛空挺はセンクレイス城の前まで飛んで来たのだった。





二人は、オリフィエルの過去に関する部分と、彼に聞こえたもう一つの謎の声の事は切り、

その話を、集まったソル達に対して話した。


オリフィエルと関係のある悪魔の事をミカエルの耳に届かせるのは不味かった。





その話を聞き、全員が信じられないような表情をする。


突拍子も無い話だ…

突然、かつて倒した敵がまた復活するかもしれないと言われ…

おまけに、それ以上の敵まで現れるかもしれないと聞いたら、


誰だって信じられない…いや、信じたくない。



この話を聞き、表情を変えなかったのはガブリエルとオリフィエル…スライサー…それに、


サタンとか何とか全く話が掴めないエストレア。


その四人だけだった。




ライトが絶望の言葉を口にする。


「そんなの、どうしろと…」


オリフィエルが、それが確定事項であるかのように言うため、一同は暗い表情をしていた。




サタンの脅威は去ったと完全に考えていたミカエルは下を見たまま動かなかった。





「…対処法は?」


ボルトがゆっくりと口を開く。


彼は考えた。

まだその何者かは現れていない…


ならばそれを先に潰してしまえば、或いは…





「…私とオリフィエルで飛空挺の中でしばらく考えてみた結果…

 おそらくその敵は他の空間…下手をすれば他の時空にいる可能性がある…」



「何…?
 他の空間…時空…」



それじゃあ、探しようが無い。

そもそも。



他の世界に行く方法ならばいくつかあるはずだ。


実際、ライトやボルトはそんな事さも当然の事かのようである。



しかし、異なる空間に行く方法なんて…






ここで、エストレアが空気を読まずに言う。


「そんな話、信じていられるか!」


「……」

一同は沈黙する。


尚もエストレアは発言する。


「そんなに未来が闇に閉ざされる事なんてねぇぜ!
 もし閉ざす奴が現れたなら叩き潰しゃあいい!
 深く考えるだけ無駄だぜ!?」





「…そうかもしれないな。確かに、起こってみなきゃ分からない。」



スライサーはそれに同調する。



それに続き、他の一同も元気を取り戻していった。


「そうだよな!
 そんな敵が現れても倒せばいい!」


「いざとなったら、
 うおおおおおおおおおおおおお!!
 グゥラァンドフォォォォォ…」

「黙れ」


活気づいていた。



ガブリエルとオリフィエルは顔を見合わせていた。


「…オリフィエル。
 何か出てきても、勝てそうな雰囲気なんだけど」

「…そうかもなあ。
 ま、どうにか出来るか…この面子なら」







しかし、その雰囲気は崩れた。


「…悠長な事を」



「!?」


一同は、上を見た。


上から、声がしてきた…気がした。



「この声…あの時の!」



そう、それはガブリエルとオリフィエルに話しかけてきた声だった。




「…こういうのも難だけれど…

 今の貴方達に、新たなる危機を超える力は無い」




「何ぃ!?」


ソルは焦った。いきなりそんな事を言われても。



「そして、貴方達がそんなに悠長にしていたら…
 対処する方法は無くなり、時空は消えてしまう」


「は!?
 意味不明!」


先程楽観的に言ったエストレアが大声を上げる。






「…貴方達が動かないならば、全ての生命の運命は絶望の中…
 最悪の未来へと消える」



それきり、声は聞こえなくなった。







「…何だって言うんだよ」


再び、最悪の雰囲気になった。