第75話 空間天使と天空天使と その日の事だった。 レッドオーシャンの中に入れられていたまま、 天使達に気づかれずにセンクレイスへと一緒に来てしまったスピード。 彼…じゃなくて彼女がふと起きて外に出ると違う風景が広がっていたのだった。 ちなみにさっき直した通り、スピードはあんな口調だけど女である。一応。 「ここは…ああ…センクレイスか…」 彼女は少し暗くなっていた。 「出来ればこんな所来たくなかったな… 後ろめたい…」 彼女を含めた「天空の天使」が以前この国を襲撃した事がある。 二回もこの国は滅ぶことになったのだが、奇跡の復興を遂げている。 ただ、二回目は本当に奇跡だった。 ともかく、そのために彼女は後ろめたさを感じていた。 自らの心の弱さがその感情を更に追い詰めていたのだった。 その時、城から一人出てきた。 「……」 暗い表情をしたミカエルだった。 「スピ…ミカエル!!」 スピードは思わずその名を呼んでしまった。 そして後悔した。 「ん、お前は」 「何で呼んでしまったんだ… ひ、久しぶり」 「あ、ああ。」 わざわざ名前を呼ぶ必要は無かった気がする。 というより、怖かった。 例えば、「お前は以前やった事を忘れてこんな所に来たのか!?」とかそう言われるのが怖い。 「ご、ごごごごごめん!!」 「…は?」 突然謝りだしたスピードを見て、ミカエルは訝しく思った。 何故かいたと思いきやいきなり謝罪である。何がしたいのやら。 「な、何を謝ってるんだ?」 「え!? ほ、ほら、 以前色々やってしまったし、それに…抱きついて」 「その話はやめとけ。あれは恥ずかしかった」 以前スピードがミカエルに抱きついた事がある。 まだミカエルの正体が知られていなかった頃の事だった。 天使化以前のオリフィエル…ウィンドだけ目撃していた…と思いきや、 あの時付近にいた全員がそれを目撃してしまい、 二人は恥ずかしさの余りどこぞの滝のように涙を流したのだった。 水分が枯渇するかと思った。 オリフィエルが後でフォローしてくれたが。 あの光景はソル達や反乱軍の天使達等の心に深く刻みつけられたのだった。 ちなみに。 大体、ラーファス帝国の一件にケリがついた後辺りの事。 あの時、一度スピードはミカエルと遭遇していたのだ。 その時のことである。 ある街にて。空間天使の一行とスピードが遭遇した。 「何でこんな所に?」 ラファエルとガブリエルが同時に彼女にそれを聞いた。 「え、えっと…」 ある街を歩いていたら突然あの一行に遭遇してしまい、スピードは焦ってしまった。 咄嗟に、彼等と一緒にいたオリフィエル…ではなく、ウィンドはまたフォローを入れようとする。 「きっとこの街に美味しいデザートの店でもあるんだろ。 こいつ、確か甘い物大好きだから」 甘い物好きは事実らしい。 「ふーん…」 それでもなお怪しむラファエル。 「そ、そうそう! この街には近頃人気のデザート専門店があって、そこに行く途中だったんだよ!」 そうして彼女は急いで反対方向へ行こうとしたが… 「そんなに美味しいのか? なら俺もそこ行きたいんだけど」 ミカエルが特に空気を読む事をせずに発言したのだった。 ウィンドがラファエルとガブリエルを止めている間に二人を行かせた。 で、スピードはそれっぽい所を急いで探そうと街の横通りに入ったら本当にあったので、 そこで二人でデザートを食べていたのだった。 その後、再びラファエル、ガブリエルと顔を合わせた。 何故かラファエルがニヤニヤしているのだった。 スピードは顔を赤くした。 と、まあそんな事があった。 「ほら、あの時もまた恥ずかしかったり」 「……そうだな。 実はあの後ラファエルに口笛吹かれたんだけど」 何をやっているんだラファエル。天使じゃなくて悪魔に見える。 「ま、まあ今ここには二人しかいないし」 スピードは何故か「二人」を強調した。 「うーん…そうだな。 …ところで、ちょっと聞いてくれるか?」 一方、城内では暗い雰囲気が相変わらず続いていた。 ただ、闇の中にも光が差し込む事はある。 深い闇は彼らには…。