第78話 黒の敵と黒の少女 追い詰められたガブリエルとオリフィエル。 音も無く徐々に迫り来る敵。 「…こんな所で生きる事をドロップアウトしたくない」 「私だって、そんな事は… …何か、手は…残されていない…?」 一体でも強い。 複数いるこの状況は…避けられない死への道。 ガブリエルは諦めていた。 彼女に向けて…黒い何かは鋭利に変化させたその腕を振り下ろした。 「…ここまで…かな」 「ガブリエル! 逃げろ…!」 そこに…血が跳んだ。 一方、センクレイス城… 一同は、話し合いをしていた。 あの黒い何かについてである。 「黒い何か…何者か知らないが敵であるのは確かだ。既に犠牲者も出ている」 「また犠牲者がこの街で…この街、呪われてないか?」 王でありながらそんな事を口走るボルト。仕方が無い事だが。 センクレイス城はとにかく大きい城である。 先程の事態があったため、街の住民はほとんど城に避難した。 以前、毒ガスの中から天使達の取ってきた鉱石で城はまるで要塞のような強度を得ていた。 余談だが、見た目も要塞っぽくなったとか何とか。 「まあ、城はかなり安全だろう。相手に飛行能力は無いらしいからな」 「本当か…?」 ソル、ブルームーンはぶつぶつ話していた。 「大丈夫だ…きっと。それに、奴等はある程度のサイズはあるらしい。 一体一体来ようと、個別撃破すればいい」 スライサーが二人に対して言い放つ。 「…大きさも伸縮自在じゃなきゃいいけどな」 「…ガブリエルがいない」 ふと、ラファエルは呟いた。 「…は?」 「ミカエル…ガブリエルがいない」 オリフィエルが何処かに行ったのは見ていたが、ガブリエルも一緒に行った事は誰も気づいてなかったのだ。 「…天使じゃないぜ、今の俺は。 …でも…確かにいないな」 スピアは嫌な予感を感じた。 「…探しに行ってくる」 「…気をつけろよ? 襲われたら逃げろ。」 スピアは、危機の去っていないセンクレイスの城下町へと飛びだした。 「とはいえ、何処を探せば…」 その時、何者かの声を彼は耳にした。 『ス……ピア……』 「え?」 『スピ…ア……こっちへ…』 「こっち…? そっちか!?」 彼はその声に導かれるがまま駆けていく。 嫌な予感を振り払いたい。 彼は走る。 「…ッ、ガブリエル!? オリフィエル!?」 そしてそこに待っていたのは…少量の血を流しているガブリエル… 更に…少量とは言えないほどの血を流しているオリフィエル。 「それに、黒い何か…!?」 だけではなかった。 黒い何かが何者かを取り囲んでいる。 その何者かは… 「…少女!? 誰だ!? あいつ…!」 一人の…黒い服の少女が取り囲まれていた。 更に、彼女は…オリフィエルの普段持つ剣をその手に持っていた。 「どう、なっているんだ!?」 スピアが思わず声を上げると、その少女は彼に目を向ける。 危険な相手に取り囲まれているのに、顔色一つ変えずに。 「…その二人を早く」 少女はスピアに小さいけれど…よく通る声で話しかけた。 「…お前か!? さっき俺を呼んだのは…」 「いいから、早く」 「答えろ! お前は誰だ!?」 スピアは声を荒げる。 少女の声は先程呼んだ声と一致する。 「…貴方、仲間を無視して私の事を聞く? 仲間の命を絶やす?」 「…!」 「…私は貴方と敵対しようとは思わない…これで満足? 早くその二人を連れて去って…貴方には力が無い」 「くっ…」 その少女の言う通りにするしか無い。 何者なのか気になる…が、確かにそれどころでは無い。 「……!」 幸い、ガブリエルとオリフィエルは敵から遠くに倒れていた。 黒い何かは少女だけに狙いを定めている。 スピアは二人を担ぐと、城へ向けて走り出した。 だがそれでもあの少女が気になる。 「あれ」に取り囲まれていた…殺される! それでも走り続けるしか無かった… しかし、自体は思わぬ事になった。 スピアがふと後ろを向くと… 黒い何かはそこに既にいない… その少女はそこに立っている… 「!?」 それに驚きつつも、城へ走って行った… それでも更に気になって、また後ろを振り向いた時には、彼女も既にいなかった。