第83話 疾き霞(後編) 突如聞こえた声は、城内に、そしてスピードに対しよく響いた。 「え…? この声…聞き覚えがある…」 しかし、声が聞こえても、その姿は見えない。 一同は、周囲を見渡したが、何も分からない。 「誰だ? 何処にいる…?」 泣いていたボルトが即座に体制を整える。 肝心な時にはいい感じである。 が、全く分からない。 「分からない?」 その声はそれが疑問であるかのような声である。 「そこだ!」 と、アナエルに包帯で巻かれ続け一生を終えそうになっていたオリフィエルが突如立ち上がり、何かを上に投げた。 それはあの宝石…ブレイド・コアだった。 気のせいか、光が弱まっているように見えるが。 と、途中でその宝石が止まった。 浮いたまま。 「な、何だ!? 浮いてる!?」 「どういう事?」 「……」 ざわめく一同。一部は静か。 妙な状況に周囲の視線は集中しっ放しである。 「見える?」 謎の声は、宝石を投げつけたオリフィエルにどうやら聞いているらしい。 「風の流れがそこだけ違う」 と、普段とは別人のように呟くオリフィエル。偶然です。もしくは本当に別人です。 「偶然じゃない! 別人でもないし!」 「折角光の…なんだっけ? とにかくそんなのを使って姿を消してたのに」 突然、トン、という音がすると突然そこに金髪の女性が現れた。 それは… 「あれ、スピード、いつ増殖…」 「お前ちょっと黙れ」 ラファエルがスピアに少しキレかけた。 空気が読めない。 「姉さん!?」 「ね、姉さんって…は?」 突如声を上げたスピードに一同唖然。 「…ミスト」 スライサーが彼女に対し呼びかけた。 彼女…ミストはスライサーに向く。 「実はこっそり後ろに付いて行っていたんだけど、気付いた?」 スライサーは肩をすくめた。 「姉さん…何で… 何で…こんな所に…」 「生きてちゃ、駄目だった?」 「え!? そ、そんな事は無いけど、でも…」 スピードは動揺している。 「で、一体どんな状況なんだ? お前、知っているんだろう」 ラファエルはスライサーに聞こうとする。 直接スピードに聞かないのは空気を察してか。 「あいつは…以前死んだとされていたスピードの姉…ミスト。 殺されたとは言われたが、どうやら類稀なる生命力でどうにかなったらしい。 本人談」 「どうにかなったって…アバウトすぎないか!? それに、生きていたならもう少し早く現れれば、あの時の事件の収束も早まったと思うが…」 確かに、生きているならスピードに早く会えばいい物を…だが 「いや…あいつ、異世界で変える術が分からず彷徨ってた。 それを俺が見つけて、変える方法を教えて…」 「異世界を彷徨っていたって…何で」 丁度その時、いきなりミストがスピードに抱きついた。 「いっ!? ね、姉さん!?」 「スピード。昔はあたしから10mも離れられなかった癖に♪」 「そ、そんな随分昔の事!」 「顔赤いよ、この照れ屋さん♪」 「これ、何」 「姉妹愛?」 オリフィエルの問いにアナエルは即答した。 「そういう事聞いてる訳じゃないんだが」 「でも…よかった、生きててくれて」 「最初からそう言えばいいのに…本当、照れ屋なんだから。」 「照れ屋じゃない!」 「お、おい、本当にミストか?」 ここで、長らく気配を感じさせなかったダークネスがミストに寄って来た。 「あ、ダークネス。今忙しいから後で」 「どこが忙しいと!?」 流された。