第84話 ボルテージ(前編) 長い間異世界を彷徨っていたミストは、妹との再会に喜んだ。 そして… 「黒い敵? あたしも何体か見たけど、 威力関係無く光を当てればあっさり消えるから大丈夫!」 「…え?」 思いもよらない事を聞いた。 ガブリエルは落ち込んだ。 「何で私はあの時あんなに力を出し切って…」 だが、ダークネスはミストに強く反論した。 「太陽光に当たっても何事も無かったぞ!?」 「そういう物だと割り切らなきゃダメ。」 一蹴された。何で太陽光は効かないのだろうか。 「都合のいい連中だな…だがまあ、光なら太陽光以外何でもいいと言うなら、 世界中の人にちょっとライト持たせとけば…」 「分身なんて出来ないぞ?」 「お前じゃない」 ボルトの素早い突っ込み。 ややこしい。 むしろ人が多すぎる。 「さて…安全策が分かった所で、ちょっと色々調べるかな」 オリフィエルが城から出ようとする。 だがスピアが彼の翼を引っ張った。 「また行方不明になる気か貴様は!」 「好んで行方不明になっている訳じゃ無いぞ!? こっちにも理由があるんだよ! り・ゆ・う!!」 「大丈夫、きっと行方不明にはならないから」 と、ここでミストが口を挟んできた。 「…何でだよ」 不服そうにするスピア。そこそこ機嫌は悪そうである。 「包帯グルグル巻きになる程度に怪我もしてるし危険だろ…」 「大丈夫…少なくとも彼はしばらくは死にそうにないから」 「しばらくって何か引っかかるんだが」 「何故分かる?」 訝しげに眼を向ける。確かミストとオリフィエルは会った事は無い。 「…光、かな。 少なくともみんな光が…」 「光…?」 と、ミストが誰かを見て止まっている。 その視線の先には… ボルテージがいた 「…え? 俺死ぬのか? そんな注目いらねぇよ!」 早速焦り始めた。話は聞いていたらしい。 「そうじゃなくって… 何と言うか…目立てなさそうなオーラを感じるから…」 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 ボルテージは泣きながら城を飛び出していった。 「姉さん外道!」 「正直に言っただけだけど… でも他にも予備軍はいるかも」 「…ソルとか以外は全員予備軍じゃないだろうな」 と、いつの間にかオリフィエルがいなくなった。 「あーっ! また行方不明になりやがった! 何回目だ!」 そんなスピアをラファエルが宥める。 野獣をしつけるように宥める。 外 「畜生…そんなオーラ出てたのか… 魚&悪霊と同じオーラだったりしないよな…? もしそうだったら散々酷い扱いを受けた挙句最後は死ぬんじゃないか?」 中々、憂鬱なボルテージ。 気力が残っているように見えない。 気のせいか彼が真っ白に見える。 と、 「おい」 「ん? …なんだよ立場の恵まれた天使様かよ」 「トゲトゲしさが凄いな… …まあ、まだ諦めるには早いんじゃないのか?」 「いや…ずっと前からこんな感じなんだが」 「それはトゲトゲしさか? もう片方か?」 「いいよな、どこぞの誰かと同じ名前をだったが故にそれなりの立場になった奴。 俺なんてボルトに全てを奪われたんだぞ」 ボルテージは何所か…本当に遠い何所かを睨みつけた。 オリフィエルはボルテージから禍々しいオーラを感じて身震いした。 「ごめん、どこぞの誰かの代わりに謝っとくわ… でも本当、諦めるなよ…」 「じゃあどうしろっつーんだよ! あ゛あ゛!?」 凄まじい負のオーラを放つボルテージ。 今の彼を見ればスライサー辺りでも逆らえそうにない。 悲しみと憎しみがよく感じ取れた。 その周囲だけ背景が黒く染まっている。そんな気がする。 「…なら、まともに戦えるようにでもするか? 武器でも調達して」 「…エストレアとやらは滅法強い癖に扱いが悪いんだが」 「アレは…うん…オート背景同化とやられ役補正でも入ってるんじゃないか…?」 「何だそれ」 「まあとにかく、腕を強いアイテムでカバーするのも実力の内だ。 思うに、お前活躍少ないんだよ。 特にスピアの奴のせいで他の連中の出る幕無い事あるもんな」 「確かに…っていうかあいつのせいだ! 絶対!」 ボルテージが敵意を燃やしている。 と、オリフィエルはいきなり悲しげな目をしながらボルテージに聞いた。 「ところでさ…俺とあいつの関係ってどんな感じだと思う?」 その質問にボルテージは面食らう。 「…は? 仲間じゃないのか?」 「そういう事じゃない… 例えば、カレーに福神漬は多くの人が知っているいい組み合わせじゃないか」 「はあ。 カレーって確か…米にかける奴だな、 で、赤いのが確か福神漬…以前ライトもウイングもフリーズも組み合わせて食ってたな。 俺も美味いと思ったぞ」 異世界人(元々は人でもない)ボルテージ。 オリフィエルは続けた 「そして俺のスピアとの関係だが… 例えるなら、ラーメンと福神漬だ」 「何だそりゃ」 「何って? この場合ラーメンがメインだろ? これがスピア。 で、ラーメンに福神漬を入れるのは相当なレアケースだ。 『何のためにこれはあるんだ』ってなるだろ? そしてスルーされる。それが俺だ」 「……」 「もっと別に例えると欲しい物を手に入れるために一緒に買う羽目になった抱き合わせ品。 そんな感じ。おまけ。付属品。邪魔な物。」 ボルテージはオリフィエルの事が居た堪れなくなって目をそらした。 「で、きっぱり言うと俺はスピアの怒りの起動スイッチ。そんなもんさ」 ここでボルテージは思った。 「俺なんて倒れても誰の怒りも起動しないぞ」 「…そうだな。役立たずと捨て駒って似てるよな」 「同じだよな、最早」 「「………」」 場所は移りそこはサイバーキングダム。 ボルテージは初めて訪れる場所である。 オリフィエルはここに当てがあるとボルテージを連れてきた。 「何だこの街、道路とかも全部サイバーな感じがするぞ」 「その名の通り。ここの初代の王って脳味噌が筋肉だとか言われてたらしい」 「じゃあ何故こんなサイバーな国になったんだよ」 「周りが頭良かったんだろ…」 数日ほど経過してこの場所に来た。 船の直行便で辿り着いた。 サイバーキングダム、スノークリアの二国は永遠の世界の極北部に位置する島にある。 サイバーキングダムはドームに覆われた巨大な一つの街…国一つが丸ごと街になっている。 オリフィエルの目的地はここから近いらしく、スノークリアの「森林の都」とやら何やら、 そんな所にあるらしいがボルテージはあまり記憶力はよくなかった。名前が薄れている。 「で、ここで強力な武器が?」 「ああ。俺のやたら広大な知り合いネットワークを辿って結論付けた」 「…知り合いネットワークって」 「神剣の奴等とか…天使信仰者とかな。そういうのたくさんいて。 少し顔の利くかもしれない重火器作ってる奴がいる」 「重火器…って何だ」 「…ま、まあ見りゃ分かるさ」